
とにかく厚いテンションコードの連続で音密度が“濃厚”なのである。『インサイド・アウト』のこのヨコノリはフュージョンのものではなくジャズのものである。
「エレクトリック・バンド」から「アコースティック・バンド」への変化は“音の削減”がテーマであったが「アコースティック・バンド」を経験し,再起動した「エレクトリック・バンド」でのテーマは「アコースティック・バンド」のテンションはそのままに“電飾する”ことにあった。
チック・コリアのMIDIとシンセが“エレクトリック一辺倒”にはなっていない。チック・コリアの中ではエレクトリックとアコースティックとの“垣根”がとっぱらわれてしまったような感じ。
そう。『インサイド・アウト』における電飾の“塩梅”が絶妙であって,いかにも「アコースティック・バンド」を体験した者たちによる「通過儀式」のように感じてしまうのだ。
曲想もそうである。『インサイド・アウト』には【MAKE A WISH】【STRETCH IT】【TALE OF DARING】と題する「組曲」が3つも入っている。ゆえにテーマが複雑ではっきりしない。正直,何を演奏しているのか分からなくなるくだりが多い。
アヴァンギャルドな長尺で超絶なソロ廻しが増えている。この辺りのフリーなアドリブ・スペースでの硬派なフレーズ全開が“エレクトリック・ジャズ”している所以なのだ。
そんな“エレクトリック・ジャズ”の文脈から飛び出してきたのが最高にPOPでキャッチーなタイトル・チューンの【INSIDE OUT】。【INSIDE OUT】だけは『LIGHT YEARS』に収録されるべき“スムーズ・ジャズ”な1曲であるが,この曲での「エレクトリック・バンド」が大好きで【INSIDE OUT】を聴きたいがために『インサイド・アウト』を聴く管理人がそこにいる。

そうしてチック・コリアのピアノ・ソロと,その後に続くシンセでのバッキングのセンスが素晴らしい。こんなにシリアスな雰囲気を感じさせるチック・コリアを意識したのは【INSIDE OUT】が初めての経験。【INSIDE OUT】を聴いてからというものチック・コリアへの印象が変化した。チック・コリアのピアノに“耳ダンボ”になってしまった。【INSIDE OUT】は,そんなチック・コリアの“忘れられない”名演の1つとなった。
ラストのフランク・ギャンバレのギター・ソロが“カッコよく盛り上げるだけ盛り上げて”はい,終了〜。
ええ〜っ,もっと聴きた〜い。寸止め感がヘビロテへと誘う…。
ただし,このヘビロテの先には“テクニカル・フュージョン”な『BENEATH THE MASK』ではなく“エレクトリック・ピアノ・トリオ”の『LIVE FROM ELARIO’S』が見えている!
01. INSIDE OUT
02. MAKE A WISH - PART 1
03. MAKE A WISH - PART 2
04. STRETCH IT - PART 1
05. STRETCH IT - PART 2
06. KICKER
07. CHILD'S PLAY
08. TALE OF DARING - CHAPTER 1
09. TALE OF DARING - CHAPTER 2
10. TALE OF DARING - CHAPTER 3
11. TALE OF DARING - CHAPTER 4
(GRP/GRP 1990年発売/VICJ-5)
(ライナーノーツ/チック,悠雅彦)
(ライナーノーツ/チック,悠雅彦)
コメント一覧 (12)
ところでこのCD、私も好きですね。
先のLIGHT YEARSも好きでしたが、その流れから、さらに成熟された仕上がりになっていると、発売当時に感じました。
デイブウエックルとパティトゥイッチのリズムペアならではの曲ばかりですね。
エリックマリエンサルは、あの頃も凄かったのですが、現在はもっと凄いプレイヤーに
なっていて、すっかり魅了されています。
『INSIDE OUT』は『LIGHT YEARS』というよりも『AKOUSTIC BAND』の流れを汲んだジャズ・アルバムだと思っています。
ジョン・パティトゥッチとデイブ・ウェックルは“手の届かない”個性がありますね。あの時代にこの二人に匹敵できるリズム・チームは皆無でした。全力のJIMSAKUとて言葉では表現できない,あとほんのちょっとなのに大きな開きを感じてしまいます。
エリックマリエンサルには、このバンドでのイメージしかなかったのですが、今はビッグバンドでも大活躍ですね。
ジョン・パティトゥッチとデイブ・ウェックルで聴く「妖精」のNite Sprite。想像しただけでヨダレものですね。
エリック・マリエンサルは今やビッグバンドなのですか? CCEBの後はソロとリッピントンズでしか聴いたことがありません。エリック・マリエンサルとビッグバンドの組み合わせは興味深いですね。一度聴いてみようと思います。
エリック・マリエンサルのビッグバンド。YouTubeですぐに見れました!
超絶技巧のビッグバンドのお言葉通りの演奏でした。アンサンブルでの役割とソロでの役割を見事に果たしているエリック・マリエンサルのアルトが際立っています。
CCEBともソロともリッピントンズとも違いますが,超有名バンドのフロントを歴任したキャリアを感じてしまいます。エリック・マリエンサル大健在!
今、In Side Outを久々に聴いています。
特に03、04、05辺りは当時聴きまくりましたね。03のギターソロのバックのドラムパターンはデイブの得意パターンですね。アタマの中に浮かびます。
06の4ビート的な流れ、09のサックス、10のドラムとピアノなど素晴らしい。アルバム全体に上手く表現できないのですが「妖精」の時と同じような響きを私は感じます。
『INSIDE OUT』は,メロディーラインが抽象的で,真剣に耳を傾けるパワーを必要とするアルバムですよね。
それで私も『INSIDE OUT』と耳にしてアタマの中に浮かびのは03のギター・ソロのバックのドラム・パターンのデイブです。デイブを聴いてガットの『妖精』をイメージする感じがよく伝わります。
『INSIDE OUT』の特徴としては,チック・コリアは楽曲面や雰囲気作りの司令塔であって,演奏面では他のメンバーに自由に弾かせる,チック・コリアの統率力と懐の深さなのです。
チックコリアのスカウトも凄いです。
チックの過去の「三部作」はジャズというより、芸術だと私は思っていますし、勿論この作品もその流れを受け継いだ芸術です。今聴いても素晴らしい1枚です。
『INSIDE OUT』も勿論,チック・コリアの書き譜だと思いますよ。ただし若手のメンバー4人への信頼をベースに,フリーのスペースを多く与えて自由にプレイさせる度量の大きさが感じられます。
CCEBの中では,楽曲の印象よりも演奏のイメージが一番強いのが『INSIDE OUT』です。特にフロントのエリック・マリエンサルとフランク・ギャンバレの存在感が一層際立っていると思います。
野呂さんも『A・SO・BO』では締め付けが緩やかであってメンバーの個性を生かす楽曲作りへと変化してきています。チックも野呂さんも人気バンドの運営ゆえに苦労も多いのでしょうが,優れたメンバーとのレコーディングは喜びもひとしおなのでしょうねっ。
なお,チック・コリアの「三部作」。私も芸術だと思います。チック・コリアの創造性がとめどなく流れる時間にレコーディングできたのはジャズ・ファンにとって実に幸運なことと思います。
やはり管理人さんの言う通りCCEBは中学生が聞くものではありませんね。早熟過ぎました。
このアルバム「Inside Out」を聞いた時はただただ'脱帽,の一言でした。アルバムを聴き終わった後小声で「うわー」と言ったのを覚えています。
凄すぎたのです。何から何まで。
今でも、たまに「くあー」とか「すげー」とか家で一人叫んでます。Fusion好きなら、管理人さんもそういう経験ありますよね?
「くあー」とか「すげー」とか。経験ありますよ。「Inside Out」の時もそうでした。ただ昔の感嘆の叫びと今の感嘆の叫びは重みが違うと思っています。チック・コリアの凄さが年々理解できているように思います。
私がFUSIONにハマッタのは中学1年の時ですからCCEBを聴くのにドム男さんが早すぎることはありません。FUSION=青春!