
エレクトリックなジャズもあれば,アコースティックなフュージョンもあるのだ。
「チック・コリア・アコースティック・バンド」の『ALIVE』(以下『ラウンド・ミッドナイト』)を聴いてみてほしい。
「アコースティック・バンド」のフォーマットは,ピアノ+ウッド・ベース+ドラムから成るアコースティック編成のピアノ・トリオ。
「アコースティック・バンド」特有のコアな芸術性とは対極にある“コンテンポラリーなピアノ・トリオ”から流れ出てくる音楽は,控え目に述べてもジャズではない。
ズバリ『ラウンド・ミッドナイト』での「アコースティック・バンド」は「禁じ手」としての“アコースティック・フュージョン”!
『ラウンド・ミッドナイト』における超絶技巧のオンパレードは「エレクトリック・バンド」名義であっても十分に通用する。
思えばチック・コリアの「アコースティック・バンド」は「ライブ・バンド」として結成された“小回りの利く「エレクトリック・バンド」”であった。
チック・コリアとしたら“待望の”ライブ盤『ラウンド・ミッドナイト』で「ライブ・バンド」のベールを脱いで見せただけのことだったのかもしれないが,リスナーとしては度胆を抜かれた。心を射抜かれてしまった。メガトン級の衝撃を受けてしまった。
そう。チック・コリアは「アコースティック・バンド」で「ELEKTRICK」で「AKOUSTIC」な「エレクトリック・バンド」の“発展型”を追及してみせたのだ。
管理人の「アコースティック・バンド」に対する認識が甘かった。チック・コリアの「アコースティック・バンド」に対するスタンスは,あくまでも副業であり余興であり,チック・コリアお得意の“ヒラメキを形にしてみました”的な企画ものだと思っていた。
「アコースティック・バンド」の前作『CHICK COREA AKOUSTIC BAND』は,まあまあ,であった。「エレクトリック・バンド」の前作『INSIDE OUT』での“エレクトリック・ジャズ”に「アコースティック・バンド」からの影響を感じた。所詮「アコースティック・バンド」は“派生バンド”。それで十分だと思った。

ジャズの歴史を紐解けば『ラウンド・ミッドナイト』以上に早弾きのスタンダード集もあったことだろう。ただし,ここまで徹底的にオメメパッチリでキメまくりな“スタンダード集”は管理人の記憶にない。
陰影など全く気にしない,超絶技巧なピアノ・トリオの“口八丁手八丁”のエンターテイメント・ショーの独壇場である。
“ラテンの血が騒ぐ”チック・コリアのファンタスティックなピアノがロックンロール! “ウォーキング”するジョン・パティトゥッチのキャラ立ちベースがコンテンポラリー! “おかず大好き”デイブ・ウェックルの爆発的なドラミングがプログレッシブ!
そう。「ライブ・バンド」の「アコースティック・バンド」が,一発勝負の大舞台で「エレクトリック・バンド」の,薄化粧なのにバッチリなアイラインを“本家以上に”再現している!
「ELEKTRICK」で「AKOUSTIC」=「AKOUSTIC」でも「ELEKTRICK」!
PS 上原ひろみのアルバム・タイトル『ALIVE』は「アコースティック・バンド」の『ALIVE』を意識したの?
01. ON GREEN DOLPHIN STREET
02. HOW DEEP IS THE OCEAN?
03. HUMPTY DUMPTY
04. SOPHISTICATED LADY
05. U.M.M.G.
06. 'ROUND MIDNIGHT
07. HACKENSACK
08. MORNING SPRITE
09. LA FIESTA
(GRP/GRP 1991年発売/UCCU-9275)
(ライナーノーツ/油井正一)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/油井正一)
(紙ジャケット仕様)
コメント一覧 (2)
これも今回の一気買いの内の1枚です。
前回の「スタンダーズ・アンド・モア」も結構聞いてた方なのですが、前作とは比べ物にならないくらいハードな演奏な気がします。
ジャンルで言えば「Hard jazz」かな? 笑
訳の分からないジャンルを作り出してしまいましたが、私の言いたい事が伝われば嬉しい限りです。
特にラストの「La Fiesta」が凄すぎますね。
このトリオ全員が満遍なく輝いた演奏はもはや、絶句ですね。
素晴らしいアルバムを紹介して頂いだ管理人さんに感謝です。
『ALIVE』も買い足したのですね。このLIVEは腰抜かしてしまいませんでしたか? 椅子から転げ落ちるくらいの衝撃は受けたことと思います。
とりわけご指摘に【LA FIESTA】の大爆発。燃えに燃え上がっています。なのにクオリティが高すぎます。ジャンルで言えば「Hard jazz」は当たっていますね。