NATIVE SENSE-1 “ジャズの伝統芸能”チック・コリアゲイリー・バートンによるデュエット
 その17年振りとなるアルバムが(『NATIVE SENSE』(以下『ネイティヴ・センス』)である。

 『ネイティヴ・センス』までの“空白の17年間”が,チック・コリアゲイリー・バートンの“鉄壁のコンビネーション”にどう影響しているか? 完全に悪影響を想像しながら聴き始めた管理人。しかし,すぐにぶっ飛んだ! ぶっ飛ばされてしまった!

 『ネイティヴ・センス』の“鉄壁のコンビネーション”を聴かされては“空白の17年間”などなかったも同然。あるとすれば“熟成の17年間”である。
 チック・コリアゲイリー・バートンにとっては『イン・コンサート』を録音したのが,まるで昨日のことのような感触があったように思う。

 そう。一音交えれば,互いに相手の考えが分かってしまう。分かってしまうのだからどうしようもない。合わせようとしなくても自然と合ってしまうのだからしょうがない。
 ピアノチック・コリアヴィヴラフォンゲイリー・バートンの「天性の相性」が,ジャズ特有のファンキーでブルージーなノリと決別し,硬質でクラシカルな響きを前面に押し出し,ストイックに現代音楽の様なアブストラクトな面を少し覗かせながら,メロディアスで流麗な音楽を創造していく。その様が実は「ジャズの中のジャズ」している。

 管理人は『ネイティヴ・センス』を聴いていて,パートナーを超えたパートナー,との運命的な出会いに17年振りに立ち会った感覚に襲われてしまった。ある意味『ネイティヴ・センス』は『クリスタル・サイレンス』の衝撃を超えてしまったと思う。
 “燃えに燃えまくった”チック・コリアゲイリー・バートンの熱演はある意味『デュエット』の衝撃を超えてしまったと思う。

 そう。新たなる感動の波が押し寄せてくる。涙が止まらない。個人的にチック・コリアゲイリー・バートンを人に奨めるのならば『イン・コンサート』で良いと思うが,自分一人で楽しむのなら『ネイティヴ・センス』が一番かなぁ。
 勿論,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットは,その全てが大名盤であるし,体調とか天候とかで,その日の1枚は変わるものだが,それでも『ネイティヴ・センス』を選ぶ確率が一番高い。

 昔を懐かしむでもなく,未来に思いをはせるでもない。現在進行形の“ジャズの伝統芸能”チック・コリアゲイリー・バートンの『ネイティヴ・センス』は,事の結末,ストーリーが分かっているのに聴き飽きない。

NATIVE SENSE-2 全曲素晴らしいのだが,ミーハーな管理人としては,1曲目から5曲目までの“馴染みの曲”がド頭から連続で流れ出してくるところが『ネイティヴ・センス』最大のお気に入り。チック・コリアの有名レパートリーをゲイリー・バートンデュエットでどう表現するかが最大の関心事であったが,全く期待を裏切らない素晴らしい演奏ばかりである。

 特に【LOVE CASTLE】におけるゲイル・モランスキャットをなぞったゲイリー・バートンの“ルンルンすぎる”ヴィヴラフォンが最高に可憐でキュート!

 “空白の17年間”の呪縛が解けたのか,次のリリースは感覚が狭まり『ライク・マインズ』『ランデヴー・イン・ニューヨーク』『ニュー・クリスタル・サイレンス』『ホット・ハウス』と,やや乱発気味?にリリースが続くこととなる。
 でも,もっともっと! まだまだ聴きたい! 聴き足りない! チック・コリアゲイリー・バートンによるデュエットなら商業主義の乱発であっても大歓迎なのである。

  01. Native Sense
  02. Love Castle
  03. Duende
  04. No Mystery
  05. Armando's Rhumba
  06. Bagatelle #6
  07. Post Script
  08. Bagatelle #2
  09. Tango '92
  10. Rhumbata
  11. Four in One
  12. I Love You Porgy

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1997年発売/MVCL-24003)
(ライナーノーツ/大村幸則)

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