
なぜジャズメンがクラシックのショパンを? 実は2010年に限らず,ジャズメンには結構なショパン好きが多い! ジャズメンの“本能”として「ピアノの詩人」の書いた美しいメロディーに接すると,どうしても自分の味で料理したくなるものです!?
特にさまざまな形式,美しい旋律,半音階的和声法などによってピアノの表現様式を切り開いてきたショパン。そんな斬新なショパンだからなのか,ジャズにアレンジしても見事に様になってしまう。繊細なピアノの曲がリズミカルになり,最後まで聞き入ってしまう…。
ただし,これって楽しい作業になると分かってはいても,ジャズメンにとって「ショパン・トリビュート」を1枚のアルバムとして完成させるには相当な勇気が必要である。
ある意味,世間に広く知られたショパンの名曲は“手垢にまみれた”ジャズ・スタンダードと同列であって,敷居が高い&難易度が高い。そのままやれば全然ジャズっぽくならないし,崩し過ぎると取り上げた意味がなくなってしまう。このアレンジのサジ加減がジャズメンにとって腕のみ・せ・ど・こ・ろ…。
『MALTA DE CHOPIN』はMALTAによる「5曲のショパン集+6曲のオリジナル集」。聴き所は当然ながら前半の「ショパン・トリビュート」の方にある。
【ワルツ第7番】は,原曲の忠実なコピーの展開から一転しての4ビート→ブルース→ワルツ→4ビート。いきなり「こう来たか!」で掴みはOK。
【英雄ポロネーズ】は,アフロ系一発。メロディは完全にポロネーズだけど,聴き覚えのあるMALTA・サウンドに仕上がっている。
【ノクターン OP.9−2】は,アップ・テンポのボサ・ノヴァ。誰でも知っているあのメロディーがボサ・ノヴァに違和感なく乗っかるのには驚いた。
【別れの曲】は,8ビートのフュージョン・サウンド。メロディーを生かしてじっくりとアルトを歌い上げている。
【子犬のワルツ】は,MALTAにしては貴重なテナー。メロディーのフェイクから“ショパンの”ピアノ・トリオを招き入れている。

他人に自分の曲をいじられるのが好きではなかったと言われているショパン。でもショパンさん。『MALTA DE CHOPIN』はありでしょう?
Chopin:
01. VALSE No.7, Op.64-2
02. POLONAISE No.6, Op.53 "Heroique"
03. NOCTURNE No.2, Op.9-2
04. ETUDE, Op.10-3 "Chanson De L'adieu"
05. VALSE No.6, Op.64-1 "Petit Chien"
Malta:
06. Chopin's Dream
07. Feels Good
08. A Dream of Sishphos
09. Windcherry
10. Scoop You Up
11. A Letter from September 2010
(ビクター/JVC 2010年発売/VICJ-61644)
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