CHANGE-1 「オリジン」の『CHICK COREA AND ORIGIN』は,あの時期のものとしては相当に好きで聴き込んだ思い出がある。

 チック・コリアアコースティックジャズ・コンボ=「チック・コリア & オリジン」は,ニュー・メインストリームの王道スタイルである。
 この手のジャズ・コンボの演奏は結構耳にしてきたつもりだったが「チック・コリア & オリジン」の美しいピアノと軽快な3管との掛け合いでクライマックスへと登りつめていく音楽の過程が大好物で「実はこういうのが聴きたかった」と思ってしまった。
 『CHICK COREA AND ORIGIN』から流れてくる“伝統とトレンドの両面ミックス”が大好きだった。

 ポピュラーな人気など気にしない玄人志向の“ジャズの職人集団”な「チック・コリア & オリジン」。普通っぽく聴こえて実は普通には弾いていない“ひねくれた音楽”がツボにハマッタのだ。

 そんな「チック・コリア & オリジン」の2ndが『CHANGE』(以下『チェンジ』)である。
 1st『CHICK COREA AND ORIGIN』は,複雑ではあってもラフさの残る,そこはライブ盤ならではの即興演奏っぽい音。あれから1年経ち,バンドのコンセプトも固まったスタジオ盤の『チェンジ』では明快な“音のヒダ”が出来上がっている。

 「オリジン」の真髄とは,アヴィシャイ・コーエンが織り成す,音楽が複雑に絡み合ったテキスタイルに,チック・コリアがエッセンスを散りばめて完成したテクスチャーである。
 そう。「オリジン」の魅力とは,チック・コリアアヴィシャイ・コーエンの“夢の共演”なのである。

 2人の天才が1つのなるための空気感のようなものが「チック・コリア & オリジン」には確実に存在している。よくある“双頭バンド”のそれではない。
 チック・コリアアヴィシャイ・コーエンが有する,絶対的な自信とかプライドのような「人間としての悪の部分」での一体感と表現したら伝わるだろうか?

 『チェンジ』でも「チック・コリア & オリジン」は“ひねくれた音楽”を展開している。隠れた筋肉の塊りのような音のヒダが波打っている。
 「裏の裏が表」であるような仕掛けが『チェンジ』のコンセプトである。ジャズには,こんな新しい楽しみ方があることを教えてくれたと思っている。

CHANGE-2 ただし「裏の裏が表」ならいいのだが,チック・コリアアヴィシャイ・コーエンの“夢の共演”が「アヴィシャイ・コーエンアヴィシャイ・コーエンチック・コリア」になっている。

 『チェンジ』とは,アヴィシャイ・コーエンチック・コリアへの『チェンジ』の意味にも“裏読み”できる。
 『チェンジ』は,こねくり回しすぎたかなぁ。勢い余ってハミ出してしまったのかなぁ。面白さで1stを超えきれていないなぁ。

 『チェンジ』から受けた印象としては,パット・メセニーオーネット・コールマンの『SONG X』に通じるニュアンス。
 チック・コリアと共演できたアヴィシャイ・コーエンの“胸の高鳴り”が,チック・コリアらしくもなくアヴィシャイ・コーエンらしくもない“なんでこうなるの!”的な音楽の原動力なのだと思う。 

  01. Wigwam
  02. Armando's Tango
  03. Little Flamenco
  04. Early Afternoon Blues
  05. Before Your Eyes
  06. L.A. Scenes
  07. Home
  08. The Spinner
  09. Compassion (Ballad)
  10. Night (Lylah)
  11. Awakening
  12. Psalm

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1999年発売/MVCL-24014)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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