
「エレクトリック・バンド」解散後の「アコースティックの追求の旅」は,相当なハイ・レベルだった。「オリジン」〜「ニュー・トリオ」の「呆れるほどに完璧な演奏」は,相当に素晴らしかった。だからそれはそれで非常に満足していた。
ただその一方で,管理人がチック・コリアの音楽に求めているのは,エンターテインメント性である。つまりチック・コリアには,自身の内面を掘り下げるアーティスティックでリリシズムなジャズではなく,外向的で大衆路線のフュージョン系で彩られた「今の音楽」を存分に楽しませてほしいと思う。
ズバリ,チック・コリアの「ジャズ/フュージョン」は,一聴して分かりやすいアルバムほど出来が良い。BGMとして聞き流しながら談笑していても,会話がままならなくなるくらいに耳に食い込んでくるパワーが秘められている。
そんな管理人好みの快作が『アルティメット・アドヴェンチャー』である。管理人が“待ちに待った”チック・コリアのフュージョン系の“王道”である。
『アルティメット・アドヴェンチャー』は,それくらい“ドハマリ”した大名盤(事実『アルティメット・アドヴェンチャー』は2006年度のグラミー賞をダブル受賞)であって,個人的には非常に思い入れ深いものがある。
正直に告白すると『アルティメット・アドヴェンチャー』の熱狂の裏には,過去のアルバム群へ寄せる思いがあってのもの。
そう。『アルティメット・アドヴェンチャー』の真髄とは“アップデートされた”チック・コリアの“王道”であって,全くの新作の類には数えられない。過去の積み重ねが『アルティメット・アドヴェンチャー』で“花開いた”と表現する方が“しっくりくる”。
その中でも特に,スティーヴ・ガッド,ヴィニー・カリウタ,アイアート・モレイラ,ホッサム・ラムジー,ルベン・ダンタス,トム・ブレック・ラインの重量級のエレクトリック・ドラマー陣とオーキシ・フェルナンデス,ホルヘ・パルド,カルレス・ベナベンドのパコ・デ・ルシア所縁のスペイン勢と来れば“チック・コリアの1枚”として推し続けている『タッチストーン』に『アルティメット・アドヴェンチャー』の原型を見るというものだ。
う〜む。聴けば聴くほど『アルティメット・アドヴェンチャー』は『タッチストーン』の“アップデート盤”だと思えてくる。一度『アルティメット・アドヴェンチャー』=『タッチストーン』の法則が刷り込まれたが最期。
『タッチストーン』を「70年代チック・コリアのソロ名義の最重要盤」とする管理人としては,あたかも王家の後ろ盾を得たかのようでうれしくなってしまうのだ〜。

そう。L・ロン・ハバードからインスパイアを受けたアイディアが,チック・コリア本来の音楽性と絶妙に重なり,大きな山場が続く「音楽組曲」な展開こそが『アルティメット・アドヴェンチャー』(「究極の冒険」の意)。これぞチック・コリアの「究極の冒険」である。
チック・コリアの“エレクトリック・ピアノの大山”は世界一であるのだが,最新のテクノロジーをこれ見よがしに盛り込むのではなく,フレーズと曲の雰囲気にあわせた実に音楽的な使い方をしている。
その意味で『アルティメット・アドヴェンチャー』を『タッチストーン』と並ぶ「重要度の高いソロ名義」の1枚に指名する。
エレクトリック・パーカッションに“ドハマリ”した時のチック・コリアが,世界一のエレクトリック・ピアニスト!
01. Three Ghouls - Part 1
02. Three Ghouls - Part 2
03. Three Ghouls - Part 3
04. City Of Brass
05. Queen Tedmur
06. El Stephen - Part 1
07. El Stephen - Part 2
08. King & Queen
09. Moseb The Executioner - Part 1
10. Moseb The Executioner - Part 2
11. Moseb The Executioner - Part 3
12. North Africa
13. Flight From Karoof - Part 1
14. Flight From Karoof - Part 2
15. Planes Of Existence - Part 1
16. Arabian Nights - Part 1
17. Arabian Nights - Part 2
18. Gods & Devils
19. Planes Of Existence - Part 2
20. Captain Marvel
(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2006年発売/UCCJ-3015)
(ライナーノーツ/チック・コリア,小川隆夫)
(ライナーノーツ/チック・コリア,小川隆夫)
コメント
コメント一覧 (1)
やはりchick coerea 好きだけあってやはりこのアルバムを評論していて、即CDプレーヤーに「 The Ultimate Adventure」を入れながらこのブログを読みました
そう、今管理人さんと同じ状態。
いわいる「ドハマリ」しています。