THE HONEY DRIPPER-1 よほどのヘソ曲がりでない限り,一般的にポピュラーな人気のオルガン・プレイヤーと来ればジミー・スミスで決まりだが,もっとヒップなジャズ・マニアは,ジミー・スミスよりもブルース・フィーリングの強い,ジャック・マクダフオルガンを好んで聴いてきた。

 ジャック・マクダフオルガンは,黒人音楽のルーツであるブルースやゴスペルに深く根ざしており,そのフレーズはよく歌い,アーシーで,燃えるハートを持っている。
 そう。ヒップなジャズオルガンのマニアがジャック・マクダフを聴き逃すはずがない! そして『THE HONEYDRIPPER』(以下『ザ・ハニードリッパー』)を聴き逃すはずがない!

 『ザ・ハニードリッパー』は,ジャック・マクダフオルガンに,ジミー・フォレストテナーサックスグラント・グリーンギターが絡みつく“三つ巴のブルース祭り”!

 『ザ・ハニードリッパー』におけるジャック・マクダフの役回りは,意外や意外,ジミー・フォレストのブルース・テナーに同調するのではなく,一歩後ろに下がってコンボとしての大局を見つめる「メロディー・メイカー」としての個性を発揮している。

 これぞ,単純にブルース一本で押し通すのではなく「黒さの中に情緒と格調をブレンドする」ジャック・マクダフの独壇場! 強力な右手のコード・ワークでノリまくりつつも,客観的に演奏全体を見渡す冷静な目を持っているジャック・マクダフ独特のジャズ・ブルース。
 この「知的な味付け」は,素材の良さを知り尽くした“根っからの”ブルースマンだから出来る「味付け」だと思う。

 そんなジャック・マクダフに見守られ,遠慮なく“ファンクしまくる”ジミー・フォレストが,なんとも“能天気で”艶っぽい。
 実に『ザ・ハニードリッパー』は「ジミー・フォレストを聴くためのアルバム」でもあると思う。

 グラント・グリーンギターであるが,ソロは短めだし,まだ没個性的であって,チャーリー・クリスチャン的なアプローチが散見されるので,グラント・グリーンのフォロワーとしてはイマイチの出来であるが,それでもジャック・マクダフの放つメロディー・ラインに,ブルージーでソウルフルなフレージング“GROOVE”を重ねながら乗っかかっていく瞬間は神!
 うん。やはりグラント・グリーンのフォロワーであれば抑えてほしい。これはこれでいいから!

THE HONEY DRIPPER-2 管理人の結論。『ザ・ハニードリッパー批評

 有名な歌ものを2トラック演奏している『ザ・ハニードリッパー』こそ“歌もの”のジャック・マクダフの個性が色濃く聴こえてくる。“黒くお洒落な”ブルース・フィーリングこそが,ジャック・マクダフの“訛り”である。

 『ザ・ハニードリッパー』におけるジャック・マクダフの“黒くお洒落なブルース訛り”が,いつまでも気持ち良く耳に残る。

  01. WHAP!
  02. I WANT A LITTLE GIRL
  03. THE HONEYDRIPPER
  04. DINK'S BLUES
  05. MR. LUCKY
  06. BLUES AND TONIC

(プレスティッジ/PRESTIGE 1961年発売/VICJ-23721)
(ライナーノーツ/ジョー・ゴールドバーグ,岩浪洋三)

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