
そんなブランフォード・マルサリス・カルテットによる,現代の“まったくもってオリジナルな”コルトレーン・サウンドの最高峰が『METAMORPHOSEN』(以下『メタモルフォーゼン』)である。
ズバリ,管理人は『メタモルフォーゼン』こそが,ブランフォード・マルサリスの人間性が醸し出されたジャズだと思っている。
非常に高度なことを演っているのに難解で独りよがりでもない「メインストリート・ジャズ」の「王道中の王道」である。あの絶頂期のジョン・コルトレーンのカルテットがそうであったように…。
『メタモルフォーゼン』におけるブランフォード・マルサリスは,もはや1人のジャズ・サックス・プレイヤーの存在を超えている。
極論を語れば,サックスなしに『メタモルフォーゼン』のようなアルバムが作れるのなら,ブランフォード・マルサリスはサックスを吹くことさえやめてしまうように思える。もはやサックスがどうのこうのいう次元を越えて“ブランフォード・マルサリスの音”が鳴っていると思うのだ。
モーダルかつハードでアップテンポな破壊力を持つ曲からソフトでメロディアスなバラードに至る「表現の幅とレンジの広さ」。勢いだけではなく落ち着きも兼ね備えた「緩急自在のタイム感」。
「メインストリート・ジャズ」に求められる資質を全てブチ込んできた「王道の中の王道」が“ブランフォード・マルサリスの音”であり『メタモルフォーゼン』の音なのである。
ブランフォード・マルサリスのテナー・サックスとアルト・サックスとソプラノ・サックス,ジョーイ・カルデラッツォのピアノ,エリック・レヴィスのベース,ジェフ“テイン”ワッツのドラムが有機的に絡み合い,想像力を刺激し合い,原曲のモチーフを大きく育て上げていく。

『メタモルフォーゼン』は,曲のイメージをメンバー4人が共有しつつ,メンバー各自の奏でた音の表情,強弱を注意深く聴き分けながら演奏が進んでいく。
「短かすぎず冗長すぎずの演奏密度の濃さ」で表現されていく,ブランフォード・マルサリス・カルテットのパワーと理解力が最高に素晴らしい。
01. The Return of the Jitney Man
02. The Blossom of Parting
03. Jabberwocky
04. Abe Vigoda
05. Rhythm-a-Ning
06. Sphere
07. The Last Goodbye
08. And Then, He Was Gone
09. Samo
10. Aunt Hagar's Blues
(マルサリス・ミュージック/MARSALIS MUSIC 2009年発売/UCCM-1167)
(ライナーノーツ/中川ヨウ,ブランフォード・マルサリス,ジョーイ・カルデラッツォ,エリック・レヴィス,ジェフ“テイン”ワッツ)
(ライナーノーツ/中川ヨウ,ブランフォード・マルサリス,ジョーイ・カルデラッツォ,エリック・レヴィス,ジェフ“テイン”ワッツ)