
世紀の大名盤『CRYSTAL SILENCE』のリリース後も,チック・コリア&ゲイリー・バートンによる“ジャズの伝統芸能”は『DUET』『IN CONCERT,ZURICH,OCTOBER 28,1979』『NATIVE SENSE』と続いたわけだが,ニュー・アルバムの発売の度に誰しもが思い浮かべたであろう『ニュー・クリスタル・サイレンス』のアルバム・タイトルは封印され続けてきた。
そのどれもが『ニュー・クリスタル・サイレンス』を名乗ってもおかしくない素晴らしい内容であったのに…。
そう。『ニュー・クリスタル・サイレンス』なるアルバム・タイトルは,チック・コリア名義であっても,ゲイリー・バートン名義であっても,そう簡単にネーミングできない,ジャズ界の“永久欠番”!
そんなジャズ界の“永久欠番”『ニュー・クリスタル・サイレンス』のアルバム・タイトルをついに冠した,チック・コリア&ゲイリー・バートンの新デュエットCDの登場に,喜び以前の“胸騒ぎ”を感じてしまった。
これってセールス至上主義では? なんともゴマ臭い?
しかし,と言うべきか,やっぱり,と言うべきか。どんなにハードルが上がったとしても,チック・コリア&ゲイリー・バートンの名コンビは,その全てのプレッシャーを軽々と乗り越えてくる。
そう。『ニュー・クリスタル・サイレンス』のアルバム・タイトルは『ニュー・クリスタル・サイレンス』のためのものであった。
結果として『DUET』『IN CONCERT,ZURICH,OCTOBER 28,1979』『NATIVE SENSE』に『ニュー・クリスタル・サイレンス』のアルバム・タイトルは荷が重かったように思う。
ジャズ界の“永久欠番”と思われた『ニュー・クリスタル・サイレンス』が,ジャズ界の“新・永久定番”!
『ニュー・クリスタル・サイレンス』の『THE NEW』の部分は,2枚組ライブ盤&オーケストラとの共演から聴こえてくる,現代ジャズの「温故知新」そのものであった。
1973年の『クリスタル・サイレンス』1枚と2008年の『ニュー・クリスタル・サイレンス』の2枚の合計3枚組。35年間かけてついに完成した「SILENCE」で「CRYSTAL」なジャズ。
“COOL”な発熱反応はそのままに,成熟というか,円熟というか,枯れた感じを漂わせながらも,じわじわと盛り上がってくる無上の喜び。あ〜,何回聴いても幸せを感じる!

クラシック調でスタートするが,徐々に音風景がジャズへと変わり,最後には,チック・コリア&ゲイリー・バートンの音世界,だけが抜きん出て響き渡っている。スペクタクルなオーケストレーションの高揚感が素晴らしい。
CD2のデュオ・ライブでは,チック・コリア&ゲイリー・バートンの「十八番」だけではなく,ビル・エヴァンスの【WALTZ FOR DEBBY】やらセロニアス・モンクの【SWEET AND LOVELY】やらジョージ・ガーシュインの【I LOVE YOU POGGY】やらを,チック・コリア&ゲイリー・バートンの音世界で聴きたいと思っていたファンとしては,その願いがついに叶ってお涙もの〜。
『ニュー・クリスタル・サイレンス』のハイライトは,CD1とCD2ともに最後に収録されている2つの異なる【LA FIESTA】であろう。
演奏を重ねれば重ねるほどチック・コリアの手を離れ,有名ジャズ・スタンダードの貫録を放っているように思う。どちらも素晴らしい大名演である。
CD1 Duet with Sydney Symphony
01. Duende
02. Love Castle
03. Brasilia
04. Crystal Silence
05. La Fiesta
CD2 The Duet
01. Bud Powell
02. Waltz for Debby
03. Alegria
04. No Mystery
05. Senor Mouse
06. Sweet and Lovely
07. I Love You Porgy
08. La Fiesta
(コンコード/CONCORD 2008年発売/UCCO-1043/4)
(ライナーノーツ/パット・メセニー,ゲイリー・バートン,チック・コリア,小川隆夫)
(CD2枚組)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/パット・メセニー,ゲイリー・バートン,チック・コリア,小川隆夫)
(CD2枚組)
(デジパック仕様)
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