
個人的な愛聴盤は,意外と思われがちなのだが,ジョン・コルトレーンが『バラード』。ファラオ・サンダースが『愛のバラード』。
だったらアーチー・シェップのバラードもいけるだろう,で購入したのが『BLUE BALLADS』(以下『ブルー・バラード』)。
そう。脳ミソ破壊系のフリー・ジャズは,日常生活では流れてはいけない。ここぞ!という時に流すべきなのが“フリー・ジャズの奥義”なのである。
とは言え,日常生活で“甘すぎる”バラードもいけない。バラードを聴くなら,超ハードボイルドなやからたちの“中和された”バラードに限る。ジョン・コルトレーンとジョン・コルトレーンの2大直系,ファラオ・サンダースとアーチー・シェップのバラードに限る。
重く荒々しい音はそのままにして,かつての前衛的な演奏とは異質なソフィスティケイトされた演奏に心惹かれてしまうのだ。なんてね〜。分かったふりしてごめんなさ〜い( 実はファラオ・サンダースもアーチー・シェップもGETしたのは5年前〜。でも聴き込みましたので〜 )。
アーチー・シェップの『ブルー・バラード』は,絶賛するほどまでは良くない。アーチー・シェップのバラードなら『ブルー・バラード』の続編である『トゥルー・バラード』が一段上である。
その理由とは『ブルー・バラード』でのボーカルが邪魔に聞こえるからだ。アーチー・シェップなら,口で歌わずとも,テナー・サックスで歌えるはずなのに…。ヴォーカル以上にテナー・サックスの“声質”の方が「しゃがれ」ているのに…。

『ブルー・バラード』は「ブルース・バラード」とでも呼ぶべき「退廃的な匂い」が充満するバラード・アルバム。わざとルーズに吹いてみたり息を漏らしたりして,ブルージーな音の枯らし方に何とも言えぬ“味わい”がある。
時折,乱暴なトーンでアウトし,ダーティなフリーキー・トーンでうめいている。深く重く渋いテナーの音色がザラついている。
そう。『ブルー・バラード』は,ジョン・コルトレーンの面影を残し,フリー・ジャズの面影を残した,どこからどう聴いても“アーチー・シェップのバラード”ど真ん中。これでボーカルがなければ愛聴盤になったのに…。
01. Little Girl Blue
02. More Than You Know
03. Blue In Green
04. Blue And Sentimental
05. Cry Me A River
06. If I Should Lose You
07. Alone Together
(ヴィーナス/VENUS 1996年発売/VHCD-4105)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/今井正弘)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/今井正弘)