
ビル・チャーラップのスタイルが,非の打ち所のない“ジャスト”タイプのピアニストなのだからしょうがない。
ジャズメンは“個性が命”なのだから“清く正しく美しい”ビル・チャーラップとしては不利な図式である。
個人的にはビル・チャーラップを高く買っているのだが,これが何度試しても,イマイチ,説得力を持って奨めるには向かないタイプなんだよなぁ。
いっそのこと,欠点があったほうが説明しやすい。「欠点がないのが欠点」って,皆さんに周りにも1人や2人はいるでしょう? お金持ちでイケメンにして真面目なエリートタイプの実力派がっ。そんで付き合ってみたら中身は超いい人間がっ。
いや〜,ビル・チャーラップが大好きなだけにもどかしい。
管理人がビル・チャーラップを「サラブレット」と呼んだのは“生まれながらにして”ジャズ・ピアノを弾き出したような素養の深さを感じるからである。オーソドックスで上質な品のある芳香を醸す“ナチュラルな”ピアノなのである。とにかく音タッチが柔らかい。
バド・パウエルとセロニアス・モンクの時代からのビル・エヴァンス,そして“御三家”のハービー・ハンコック,チック・コリア,キース・ジャレットの時代からのミシェル・ペトルチアーニ〜ブラッド・メルドーへと通じるジャズ・ピアノの系譜。
その流れの中で,奇をてらわずして,真正面から弾き上げたビル・チャーラップのジャズ・スタンダードは,原型をとどめたままの状態で,まるでマジックを仕掛けられたかのように,流行の最先端の洋服を着させられたかのように,お洒落に変身していく。
こんな感じの「まとまったオリジナル感のある」ジャズ・ピアノを弾かせたら,ビル・チャーラップが“無敵”であろう。

エレガントでノスタルジックなスインギン・ピアノがダイナミックに響き渡り,最高に気持ち良い。ピアノなのに歌を聴いているかのような感動がある。
ビル・チャーラップに「サラブレット」を感じるのは,スロー・テンポのスタンダード。歌を知り尽くしたがゆえの,すがすがしさ。原曲の美しさを100%引き出しており,かえってその重厚感を際立たせている。ゆっくりではあってもだらけず,その美しいハーモニー,切れの良いタッチはいつ聴いても瑞々しい。
さて,ここまで絶賛してきたビル・チャーラップであるが,管理人はビル・チャーラップをソロ名義の「ビル・チャーラップ・トリオ」ではなく「ニューヨーク・トリオ」で聴いていま〜す!
01. Time After Time
02. My Shining Hour
03. The Blue Room
04. Boy, What Love Has Done To Me
05. Isfaban
06. Lover
07. Something To Live For
08. 'S Wonderfull
09. Summer Serenade
10. Only The Lonely
(ヴィーナス/VENUS 1999年発売/VHCD-4059)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/寺島靖国)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/寺島靖国)