
管理人の認識では,チック・コリアが影響を受けたジャズ・ピアニストは,バド・パウエルとセロニアス・モンクというビ・バップ期を代表する2大ピアニストだけだったと思う。
それがここへきての“ビル・エヴァンス押し”が凄まじく,ある種の戸惑いを覚えてしまう。
そんなチック・コリアの“ビル・エヴァンス押し”の最たるものである『FURTHER EXPLORATIONS』(以下『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』)を耳にして,戸惑いが吹っ切れた。
『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』の中にビル・エヴァンスはいなかった。ここにいるのは,そのまんまのチック・コリア,だった。チック・コリアが“どうあがいても”ビル・エヴァンスになれやしない。
そういう訳で,管理人は『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』をチック・コリアの新しいピアノ・トリオの1枚という位置付けで聴いている。
チック・コリアからビル・エヴァンスを切り離して聴き始めると『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』が,俄然,面白い!
エディ・ゴメスのベース,ポール・モチアンのドラムと組んだ,チック・コリアの新しいピアノ・トリオは,過去に例がないくらいに,チック・コリアのピアノだけが“浮いてしまっている”。
原因は,完全にビル・エヴァンスを演じきれない“戸惑い”がそうさせているのだろう。まとまらないから,つい音数が多くなってしまったのだろう。“饒舌な”ピアノにチック・コリアの“手癖”がワンサカと記録されてしまっている。
いいや,つい音数が多くなってしまったのはポール・モチアンの「ドッタンバッタン」なドラムにして「ファジー」なドラムのせいであろう。
ポール・モチアンが“ブラシで撫でれば”チック・コリアが音を出し,ポール・モチアンが“スティックで叩けば”エディ・ゴメスが音を出す。ポール・モチアン自身は,時に無言になり無音で音空間を広げている。流石ですねぇ。

チック・コリアをもってしても“最強”ポール・モチアンには敵わなかった。ビル・エヴァンスがポール・モチアンを長く手放さなかった理由を再確認できたというところである。
『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』が「チック・コリア/エディ・ゴメス/ポール・モチアン」名義だから星4つなのだが『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』が「ポール・モチアン WITH エディ・ゴメス FEATURING チック・コリア」名義なら星5つ〜。
それにしても,最初から最後までエヴァンス風で弾き通す「ビル・エヴァンス・トリビュート」が氾濫する中,あくまでもチック・コリア流を貫き通しつつ,全力でポール・モチアンにぶち当たったチック・コリアは嫌いではありません。
CD 1
01. Peri's Scope
02. Gloria's Step
03. They Say That Falling In Love Is Wonderful
04. Alice In Wonderland
05. Song No.1
06. Diane
07. Off The Cuff
08. Laurie
09. Bill Evans
10. Little Rootie Tootie
CD 2
01. Hot House
02. Mode VI
03. Another Tango
04. Turn Out The Stars
05. Rhapsody
06. Very Early
07. But Beautiful - Part 1
08. But Beautiful - Part 2
09. Puccini's Walk
(ユニバーサル・ジャズ/UNIVERSAL JAZZ 2011年発売/UCCJ-3027/8)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/ボブ・ベルデン,チック・コリア,ポール・モチアン,エディ・ゴメス)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/ボブ・ベルデン,チック・コリア,ポール・モチアン,エディ・ゴメス)