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HOT HOUSE-1 ピアノチック・コリアヴィヴラフォンゲイリー・バートンによる15年振りとなるスタジオ録音の大名盤が『HOT HOUSE』(以下『ホット・ハウス』)。
 『ホット・ハウス』がこれまた素晴らしい。何年間隔が空こうとも,何年間隔が詰まっていようと,何ら影響のない“安心で安定の大傑作”のリリースである。

 過去の2人の大名盤の5枚と比較して『ホット・ハウス』の“目新しさ”を語るとすれば,それは「有名スタンダードカヴァー集」ということになるのだが,ハッキリ言って,選曲は違えど演っていることはいつも通りで“目新しさ”など感じない。

 しかし,この「変化しないという男気」こそが,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットについて“ジャズの伝統芸能”と称される所以であって,いつまでも「異次元のデュエット」を守り続けることに専ら価値を見い出すというもの。

 逆説的に説明するなら『クリスタル・サイレンス』〜『デュエット』〜『イン・コンサート』〜『ネイティヴ・センス』〜『ライク・マインズ』〜『ランデヴー・イン・ニューヨーク』〜『ニュー・クリスタル・サイレンス』がリリースされてきた約40年という歳月の間に,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットを越えるデュエットが登場することはなかった,という事実。
 そう。40年経とうともチック・コリアゲイリー・バートンデュエットが「ジャズデュエットの金字塔」に変わりがなかったのだ。

 このライバル不在の現状が,チック・コリアゲイリー・バートンにとっては,大きな壁となり,大きなチャレンジとなってきたと思う。
 毎回「手を替え品を替えて」ファンを飽きさせないよう努めるのではなく,正面突破の同じ手法でアプローチするのに飽きさせない。特に1作目『クリスタル・サイレンス』が“世紀の大名盤”のスタートだったのだから,前作を越え続けるのは並大抵の仕事ではなかったことだろう。

 ファースト・インプレッションが素晴らしければ素晴らしいほど,次に与えるインパクトは弱くなる。驚きは後退するのである。ただ,それでもその驚きの先に,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットがあるのだと信じている。

 例えば,生まれて初めて蒸気機関車を見た。富士山を見た。東京タワーを見た。きっとその時は感動したはずなのに,今ではその感動を思い出せない。
 ではこれが虹だったならどうだろうか? 何回見ても,何年経っても虹に興奮していまう。あんな虹やこんな虹に【TOUCH THE RAINBOW】。今眺めている虹を見ながら,前回見た「七色の虹」のシチュエーションを思い出したりしてしまう。永遠に色褪せない感動であり,思い出がますます美化されていく。

 そう。チック・コリアゲイリー・バートンデュエットは,蒸気機関車や富士山や東京タワーとは異なる「七色の虹」のようなジャズなのだと思う。

HOT HOUSE-2 1973年の『クリスタル・サイレンス』のレインボー〜1979年の『デュエット』のレインボー〜1980年の『イン・コンサート』のレインボー〜1997年の『ネイティヴ・センス』のレインボー〜1998年の『ライク・マインズ』のレインボー〜2003年の『ランデヴー・イン・ニューヨーク』のレインボー〜2008年の『ニュー・クリスタル・サイレンス』のレインボーは,その全てが美しかった。

 そして2012年の『ホット・ハウス』の「七色の虹」も素晴らしい。特に【MOZART GOES DANCING】におけるハーレム・ストリング・カルテットの瑞々しくも重厚感のある「弦楽四重奏」が加わった大名演が素晴らしい。

 やがて時間と共に『ホット・ハウス』に対する感動も薄くなることだろう。驚きは後退するであろう。ただ,それでもその驚きの先に,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットがある。
 『ホット・ハウス』には,チック・コリアゲイリー・バートンの強い信念が感じられる。

  01. Can't We Be Friends
  02. Eleanor Rigby
  03. Chega de Saudade
  04. Time Remembered
  05. Hot House
  06. Strange Meadow Lark
  07. Light Blue
  08. Once I Loved
  09. My Ship
  10. Mozart Goes Dancing

(コンコード/CONCORD 2012年発売/UCCO-1116)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/原田和典)

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