
ステージの共演者だけではなく,裏方さんにしても,オーチャードホールに足を運んだ観客にしても『アイム・ウィズ・ユー』のレコーディングに関わった全員が渡辺貞夫を心の底から愛している。それ位に会場全体の温かい雰囲気がCDを通じて伝わってくる。感動である。
この温かさの最たるものは,音のWARM。生身のブラスの音であるビッグバンドの存在である。
『アイム・ウィズ・ユー』は,何と!渡辺貞夫60年のキャリアの中で初となるビッグバンドとの共演アルバム。なぜ今までなかったのか不思議なくらい。それ位に渡辺貞夫と総勢16人で構成されたビッグバンドが“しっくり”きている。
主役である渡辺貞夫を「お膳立て」するのは当然の役回りである。ただし,ブラスの全員が渡辺貞夫の引立て役になろうとした結果ではない。そうではなく,渡辺貞夫との共演を自然と心から楽しんだ結果である。
そう。メンバー全員が渡辺貞夫のアルト・サックスの大ファン。ゆえに渡辺貞夫のアルト・サックスの音色と被ることを避けているだけ。意識的というよりも本能的に身を引いただけである。
だから,自分の演奏をしながら,自分の音以上に渡辺貞夫のアルト・サックスの音をよく聴いていると思える節がある。

最高の聴かせ所をわきまえ,かつグルーヴしている。渡辺貞夫のアドリブにインスピレーションを与える“抜き差し”にうなってしまう。
勝手知ったるナベサダの名曲群がオーケストレーションによって映える映える〜! 旧知のナベサダ・ワールドを82歳にして今また新しく表現している!
『I’M WITH YOU』とは『I’M WITH SADAO』。渡辺貞夫ほど幸せなジャズメンもそうはいない。
01. TOKYO DATING
02. HIP WALK
03. TREE TOPS
04. EPISODE
05. I'M WITH YOU
06. EARLY SPRING
07. EYE TOUCH
08. WARM DAYS AHEAD
09. AIRY
10. TEMBEA
11. NOT QUITE A SAMBA
12. MY DEAR LIFE
(ビクター/JVC 2015年発売/VICJ-61736)
(ライナーノーツ/渡辺貞夫)
(ライナーノーツ/渡辺貞夫)