
CDジャケットの左から,憧れの顔ぶれが4人並んでいるではないかっ! ベースの青木智仁,ピアノの塩谷哲,サックスの本田雅人,ドラムの沼澤尚が横一列で並んでいる画に,ギョットした! ウォーっと叫びそうになってしまった! これぞJ−フュージョンを震撼させた一大事であったのだ。
だ〜って,音楽誌「ADLIB」での読者人気投票1位の常連メンバー4人で結成された「ドリーム・チーム」。この黄金メンバー4人が,自分を犠牲にしてまでもアンサンブルを重ねたのだから,何をやっても,どう転んでも間違いない。
ズバリ「フォー・オブ・ア・カインド」とは「粒立つ」4人の音と4人のメロディーが有機的に絡み合った,4人が4人とも「リーダー」であり「サイドメン」でもある「コンテンポラリー・ジャズ・ユニット」。
まっ,例えるなら,変家本元とは全く違うサウンドにして,コンセプトだけは「日本のフォープレイ」を目指したバンドと呼べるだろう。「日本のフォープレイ」を目指したのだから「フォー・オブ・ア・カインド」で活動する意義とは,上質なフュージョンの創造であろう。

「フォー・オブ・ア・カインド」の1st『FOUR OF A KIND』が,いきなり「大人のフュージョン」してみせる。本田雅人がここまで「目立たない」バンドも珍しい。
その場その場の雰囲気で,その曲にあったアンサンブルを合わせていく。頂点に君臨する4人の個性と個性がぶつかり合い見事なまでの相乗効果を生んでいる。時にはリラックスしたムードの中にもせめぎ合うスリリングな技の応酬が飛び出している。
ハードなインプロヴィゼーションをソフトなアンサンブルで覆っていく。別に自慢のテクニックを隠す必要など微塵もないのだが,やりすぎるとバンドを組んだコンセプトが台無しになる。ソロでは演奏することのできない「大人のフュージョン」を表現する,最高の場所,がある。
「フォー・オブ・ア・カインド」で,スーパーな4人が自分のファンに向けて一番に聴かせたいのが「ミュージシャン・シップ」であり「音楽家としての誇り」である。

この辺りの気持ちが十分に表現されているので,逆に安心して,青木智仁,塩谷哲,本田雅人,沼澤尚のスーパー・プレイを一心に追いかけることができる。
ゆえに2。『FOUR OF A KIND』における,青木智仁,塩谷哲,本田雅人,沼澤尚の個性とアドリブは各人のソロ・アルバムを超えることはない。
ゆえに3。本田雅人のソロを聴きたいのであれば「フォー・オブ・ア・カインド」ではなく,本田雅人のソロ・アルバムを聴くべきだと思っている。
しかし「フォー・オブ・ア・カインド」で聴こえる本田雅人の“オレ様”には,本田雅人のソロ・アルバムとは別人の“オレ様”が宿っている。これこそが「フォー・オブ・ア・カインド」を聴くための理由である。
事前に当然のように用意された,ネームバリューで与えられたソロ・パートをこなすのではなく,メンバー全員の信頼を勝ち得て,言わばみんなから与えられたソロ・パートだけに,いつも以上に誇り高い,言わば「バンドの代表選手」としてのソロ・パートが鳴っている。

「フォー・オブ・ア・カインド」は,バンド&バンド,していない。だから平凡なオリジナル曲ではなくカヴァー曲を選曲したんだろうなぁ。至極納得。
“本田雅人命”の管理人が人生で初めて出会った,オリジナル曲よりもカヴァー曲の方が出来がいいアルバムが『FOUR OF A KIND』。SALTバンドにも『FOUR OF A KIND』のようなアルバムはなかった。
う〜ん。でも正直,本田雅人と塩谷哲の演奏に,初めて「リスナーおいてけぼり」な雰囲気を感じた。美メロを高次元でアンサンブルさせるための内向きな演奏が,結果“独りよがり”ならぬ“4人よがり”なのかも?
出来はいいのに美味しくはない。ラーメン屋風に例えるなら,J−フュージョンの職人オヤジが「澄んだ色味であっさり味のスープ」を健康を気にする人に向けて厳選素材で作ってくれる。『FOUR OF A KIND』とはそういう音楽なのです。
でもいいんです。本田さんが,ソルトが,珍しくあれやこれやと試行錯誤しながら「ドリーム・チーム」での演奏を楽しんでいます。ファンはそれだけで満足してしまう体質なのです。
01. Fast Track
02. Alamode
03. What's Going on
04. Short Cut
05. Faraway
06. Jolly Big Feet
07. Wind and Leaf
08. Steamy City
09. Egret
FOUR OF A KIND
MASATO HONDA : Alto Saxophone, Tenor Saxophone, Baritone Saxophone, Flute, Clarinet, Trumpet, Programming
SATORU SHIONOYA : Piano, Fender Rhodes, Programming
TOMOHITO AOKI : Electric Bass, Hollow Electric Bass, Fretless Bass
TAKASHI NUMAZAWA : Drums
(ビクター/JVC 2002年発売/VICJ-60886)
(☆スリップ・ケース仕様)
(☆スリップ・ケース仕様)
その他の法令(レビ27:1-34)
青木智仁 『ダブル・フェイス』
コメント一覧 (4)
青木さんのプレイは残念ながらもう聞けないけれど。
青木さん,本当に残念ですね。「フォー・オブ・ア・カインド」のベーシストはテクニックがあればすぐに務まるものではないでしょう。
青木さん唯一のユニットだっただけに4人の中でも気合いが入っていたと思います。
私も久しぶりに聴いてみました。FUSIONというよりもJAZZユニットなのでセッションとして聞き流しながら走り流してみてくださ〜い。