
なぜならクリフォード・ブラウンが“ジャズ・ジャイアント”ソニー・ロリンズを圧倒しているからだ。“天才”ソニー・ロリンズでさえ,クリフォード・ブラウンの前では「露払い」程度に聴こえてしまう。
ズバリ,ソニー・ロリンズのアドリブがこれ程“霞んで聴こえる”のは,ソニー・ロリンズの全ての録音の中で『アット・ベイズン・ストリート』の1枚だけである。
これまでも散々書いてきたが,管理人はソニー・ロリンズを心の底から愛している。管理人にとってはソニー・ロリンズを聴く行為こそがジャズなのである。
そんな“ロリンズ命”の管理人をして『アット・ベイズン・ストリート』におけるブラウニーのアドリブにはソニー・ロリンズの「負け」を認めざるを得ない。
「元締め」マックス・ローチが仕掛けた,2人のジャズ・ジャイアントの「夢の共演」は全く機能しなかった。
クリフォード・ブラウンがトランペットを吹けば,場は一瞬でブラウニーのオン・ステージと化している。そこにあるのは“主役”のクリフォード・ブラウンと“引立て役”のソニー・ロリンズであって2人は同列ではない。
願わくば「元締め」マックス・ローチがイニシアティブを発揮して『アット・ベイズン・ストリート』を『サキソフォン・コロッサス』前夜のソニー・ロリンズに仕立て上げていたならば…。
あるいは,クリフォード・ブラウンとソニー・ロリンズの「夢のフロント・ライン」をマイルス・デイビスとジョン・コルトレーンのような師弟関係に仕立て上げていたならば…。

『アット・ベイズン・ストリート』は“ジャズ・ジャイアントを超えたジャズ・ジャイアント”クリフォード・ブラウンを聴くためのアルバムであって,ソニー・ロリンズ目当てで聴くアルバムではない。
「クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ」コンボ名義に限定すれば,テナー・サックスは“オンリーワン”なソニー・ロリンズよりも,ブラウニーの作ったノリ一発で吹きまくるハロルド・ランドの方が上であろう。
01. WHAT IS THIS THING CALLED LOVE
02. LOVE IS A MANY SPLENDORED THING
03. I'LL REMEMBER APRIL
04. POWELL'S PRANCES
05. TIME
06. THE SCENE IS CLEAN
07. GERTRUDE'S BOUNCE
08. I'LL REMEMBER APRIL (alternate take)
09. FLOSSIE LOU (rehearsal)
10. FLOSSIE LOU (alternate take)
11. FLOSSIE LOU (alternate take)
12. FLOSSIE LOU (alternate take)
13. WHAT IS THIS THING CALLED LOVE (alternate take)
14. LOVE IS A MANY SPLENDORED THING (alternate take)
15. LOVE IS A MANY SPLENDORED THING (alternate take)
(エマーシー/EMARCY 1956年発売/PHCE-4167)
(ライナーノーツ/土倉明,児山紀芳)
(ライナーノーツ/土倉明,児山紀芳)