
『メモリアル・アルバム』の共演者は,アルト・サックスのルー・ドナルドソン,テナー・サックスのチャーリー・ラウズ,ピアノのジョン・ルイスとエルモ・ホープ,ベースのパーシー・ヒース,ドラムのアート・ブレイキーとフィリー・ジョー・ジョーンズの「ブルーノート・オールスターズ」による「ハード・バップ前夜」の「ビ・バップ」である。
そう。基本的にはコード分解してきちんと決められたコーラスを吹く的な,1曲が3分ほどの10インチ盤仕様の小品集。若かりし頃のクリフォード・ブラウンが描いた「音のスケッチ」を見ているようなアルバムである。
『メモリアル・アルバム』は,既発2枚のカップリング盤ゆえにアルバムとしての統一感はない。うち1枚はルー・ドナルドソンのリーダー・セッションゆえ,クリフォード・ブラウンのトランペット・ソロには山場が短く物足りなさも感じてしまう。
しかしその分,サイドメンとしてラフに吹きまくったトランペットのブリリアントな音色と「アドリブでスケッチして見せる」即興とは思えぬ完成されたフレージングが実に素晴らしい。
確かに初々しくも聴こえる。荒削りにも聴こえてしまう。でも“旨味がギュッと凝縮されたかのような”トランペットに「ブラウニーを聴く歓び」を感じてしまう。

『メモリアル・アルバム』は,俗に言う「3分間芸術」を踏襲した,短くても言いたいことをズバッと物言う,クリフォード・ブラウンの“天才”を再確認するためのアルバムである。
短い生涯,短い活動期間にして,こんなにも物おじしない「花形」トランペットによる「3分間芸術」…。
『メモリアル・アルバム』のメモリアルが,クリフォード・ブラウンの“天才”のメモリアルである。
01. HYMN ON THE ORIENT
02. EASY LIVING
03. MINOR MOOD
04. CHEROKEE
05. WAIL BAIT
06. BROWNIE SPEAKS
07. DE-DAH
08. COOKIN'
09. YOU GO TO MY HEAD
10. CARVING THE ROCK
(ブルーノート/BLUE NOTE 1956年発売/TOCJ-1526)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,上条直之,石田康博)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,上条直之,石田康博)
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