
その理由は,自分の演りたいことのほとんどがDIMENSIONの活動を通して実現できているからだろう。特段,ソロ・アルバムを出す意欲や目的や必要性を感じていないに違いない。
ゆえに,増崎孝司のソロ・アルバム『IN AND OUT』は「DIMENSIONの活動とは無関係」。
増崎孝司の『IN AND OUT』へのモチベーションは,無性に愛するギターを弾きまくりたくなった,の1点のみ。管理人にはそのように聴こえる。
ズバリ『IN AND OUT』は「ギター・キッズ」増崎孝司としてのアルバムである。
増崎孝司はDIMENSIONのメンバーである前に“一人のギタリスト”であった。ジャムを演るのではなく丁寧に構築された“熱いギター”を前面に押し出している。
『IN AND OUT』に,DIMENSIONの代名詞“超絶技巧”は一切出てこない。
「ギター・キッズ」増崎孝司はメロディーに合わせてトーンの異なる「ギター・七変化」を弾いている。こういう所に元スタジオ・ミュージシャンとしての増崎孝司の個性が感じられる。
そう。『IN AND OUT』には,リード・ギター=増崎孝司をサポートする,サイド・ギター=増崎孝司が見え隠れしているのだ。
ジェフ・ベック・キッズ&ラリー・カールトン・キッズとして名高いが増崎孝司であるが,個人的に『IN AND OUT』ではパット・メセニーからの影響を強く感じてしまった。
安藤正容がそうであるように増崎孝司も“隠れ”パット・メセニー・ファンだったのか?
『IN AND OUT』では,増崎孝司がメロディーを弾いてソロも弾くのだが,パット・メセニーがそうであるように,それぞれのパートをそれぞれの気持ちで使い分けができている。ギター1本で見事にメロディーを重ねている。

ギターという楽器を知り尽くした増崎孝司だからできる,最良のギター表現集! こんな曲はレスポール,あんな曲はストラトキャスター,アンプはこれでピックはこれでといった,選択の全てが完璧にハマッテいる。
さて,先に「DIMENSIONの活動とは無関係」と書いてはみたが,結果として『IN AND OUT』に増崎孝司の“1人DIMENSION”を感じたりして…。
小野塚晃のキーボード・パートを増崎孝司のギターが埋める。勝田一樹のサックス・パートを増崎孝司のギターが埋める。そんなDIMENSIONがお目見えする予感がしたりして…。
うんうん。DIMENSIONの“最高傑作”『24』。『24』の大爆発の伏線が『IN AND OUT』にあると思う。
01. Natural Spirits
02. Let Me See Your Smile
03. Fly Like The Wind
04. Goodbye To You
05. Blue Eyes
06. In and out
07. Flashback
08. Shadows
09. Voices
10. Smash 2011
(ザイン/ZAIN RECORDS 2011年発売/ZACL-9050)
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