
ディズニー・アニメをほとんど見ない管理人は【不思議の国のアリス】が聴こえてくるとビル・エヴァンスの【不思議の国のアリス】を思い浮かべてしまうし【いつか王子様が】が流れているとマイルス・デイビスの【いつか王子様が】と比較してしまう体質が出来上がっている。
もはや,元ネタがディズニー映画にあることなど意識することはない。
そんな“ジャズ・スタンダード”としてのディズニー・ソングの“元祖”にして“決定盤”が,デイヴ・ブルーベックの『DAVE DIGS DISNEY』(以下『デイヴ・ディグズ・ディズニー』)である。
そう。本気ではない,企画ものの『デイヴ・ディグズ・ディズニー』が,今では「ジャズの王道」を歩んでいるのだ。
これほどまでに“ディズニー・ジャズ”が市民権を得たのは『デイヴ・ディグズ・ディズニー』の名演があればこそ! 耳馴染みの曲が名アレンジャーの題材とされたジャズって相当にカッコイイのだ!
この全てはデイヴ・ブルーベック有する「POP感覚」が「火付け役」を果たしている。デイヴ・ブルーベックの「万人受けするのポピュラリティ」が“敷居の高い”ジャズを,分かりやすくも聴き応えのあるポピュラー音楽の1つとして提示している。
これぞ,辛気臭くない,もう1つのジャズの誕生であった。『デイヴ・ディグズ・ディズニー』のジャケット写真の笑顔の如く,清く明るくほのぼのとしたジャズも聴いて楽しいものなのだ。

『デイヴ・ディグズ・ディズニー』は,リラックスした雰囲気の中で挿し込まれてくる「原曲の夢見るような“甘さ”を,いかにギリギリまで崩せるか」な,ジャズメンの心意気を感じさせる名演集!
ブロック・コードを多用したリズミカルなピアノに乗せられ,気付けば「キャッキャキャッキャ」と童心の頃の自分に帰っている…。
ゆえに『デイヴ・ディグズ・ディズニー』のようなアルバムは,何分何秒のアドリブが凄い,とは聴いてはいけない。
音楽って元来楽しむものでしたね。忘れかけていたそんな童心を思い起こさせてくれる名盤です。愛らしいアルバムです。
01. Alice in Wonderland
02. Give a Little Whistle
03. Heigh-Ho
04. When You Wish Upon a Star
05. Someday My Prince Will Come
06. One Song
(CBSソニー/CBS SONY 1957年発売/SRCS-9198)
(ライナーノーツ/熊谷美広)
(ライナーノーツ/熊谷美広)