
『20 −NEWISH−』は,名盤揃いのDIMENSIONの中にあって,格段に評価が落ちる。その原因はベース=クリス・ミン・ドーキーとドラム=ライオネル・コーデューの大物外国人リズム隊にある。そう思っていた!
しかし,どうしても心の奥で“何かが引っ掛かる”クリス・ミン・ドーキーのベース。迷盤?『20 −NEWISH−』の真意を確かめるべく購入してみた『THE NOMADO DIARIES』(以下『ザ・ノマド・ダイアリーズ』)にビックリ!
クリス・ミン・ドーキー最高! 増崎孝司よ,クリス・ミン・ドーキーを紹介してくれて,ありがとう!
ズバリ『IMPRESSIONS』『MY RULE』『20 −NEWISH−』と続いた「音の万華鏡」期のDIMENSIONに必要なベーシストは,クリス・ミン・ドーキーの他にいなかったと思い知らされた。増崎孝司のチョイスに狂いはなかったのだ。
クラブ・ジャズとは一線を画する『ザ・ノマド・ダイアリーズ』の“電化ジャズ”のハイセンス! 管理人が初めて聴いたクリス・ミン・ドーキーというベーシストは,ベーシスト版のフィリップ・セスのようであった。
クリス・ミン・ドーキーの紹介として,ちょくちょくジャコ・パストリアスが引き合いに出される意味がよ〜く分かった。
『ザ・ノマド・ダイアリーズ』の“電化ジャズ”の主役は,クリス・ミン・ドーキー・プレイズ・サイレント・ベースである。
「MIDIでエフェクトとされ,ディストーションされた」サイレント・ベースが,あたかもギターであるかのようにメロディアスにリズムと絡んでいく!
そう。クリス・ミン・ドーキーのサブネームとは“アコースティック・ベーシストのジャコ・パストリアス”。
ジャコ・パストリアスがフレットレス・ベースで革新を起こしたとすれば,クリス・ミン・ドーキーはサイレント・ベースで革新を起こしている。
「アコースティックでもエレクトリックでもない新しいエレアコ」の世界で奏でられる“電化ジャズ”が最高なのである。

この点がクリス・ミン・ドーキーの目指した「アコースティックでもエレクトリックでもない新しいエレアコ」の成果であり,クラブ・ジャズの一言では“片付けられない”無機質なのに温かい『ザ・ノマド・ダイアリーズ』の成果である。
クリス・ミン・ドーキーのサイレント・ベースに導かれ,テナー・サックスとEWIのマイケル・ブレッカー,トランペットのランディ・ブレッカー,ギターのマイク・スターン,そして“あの”坂本龍一までがピアノで「静かなのにカラフルな」美メロを“紡ぎ上げている”。「心に沁み渡る演奏」とはこんな演奏のことを指すのであろう。
マイケル・ブレッカーのラスト・レコーディングが『ザ・ノマド・ダイアリーズ』のハイセンスで良かった。悲しいけれど…。
とにもかくにもクリス・ミン・ドーキーのロマンティックな感性にメロメロで一気にドハマリ。『ザ・ノマド・ダイアリーズ』がマイケル・ブレッカーのラスト・レコーディングという事実にもドハマリ。
「新しいエレアコ」のクリス・ミン・ドーキー。またDIMENSIONでベース弾いてくれないかなぁ。
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(ブルーノート/BLUE NOTE 2006年発売/TOCJ-66370)
(ライナーノーツ/工藤由美)
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