CURE JAZZ-1 ウォォー! 『CURE JAZZ』を聴いていると,菊地成孔の興奮が伝わってくる。「心技体揃ったシンガー」をついに見つけた,という興奮である。

 共同名義の『CURE JAZZ』で菊地成孔UAとの“疑似恋愛”に励んでいる。UAへの“ラブ・コール”を送り続けている。
 自ら進んで菊地成孔UAのバンド・メンバーに成り下がっている。『CURE JAZZ』は菊地成孔UAによる「対等のコラボレーション」ではない。UAに“惚れてしまった”菊地成孔の「負け戦」の様相を呈している。

 『CURE JAZZ』における菊地成孔テナーサックスによる“雄叫び”は「みんなUAを聴け!」の合図に徹している。
 全てをお膳立てしてUAヴォーカルに「毒を盛ってゆく」サウンドが,実にJAZZY。UAって,こんなにJAZZYなヴォーカリストだったんだ!

 菊地成孔の「みんなUAを聴け!」の大攻勢に,管理人にも菊地成孔の発する“UA愛”が伝染してしまった。“歌姫”UAに“首ったけ”〜!

 UAが歌えば,それだけで音場がジャズになる! ただただUAのあの声が聴きたい! UAの堂々たる歌いっぷりを無性に聴きたくなる! これって一種の中毒症状のようなものであろう。

 UAJAZZYなヴォーカルが“手垢のついた”ジャズスタンダードUA色に染めていく。
 リスナーは,ジャズスタンダードがみるみる“UAに呑み込まれていく”過程を聴くことができる。楽曲の持つ空気感に真空と呼吸の両方を与え,時には押し広げ,時には深く沈み込む。
 そして湖面に浮かび上がってきた時には,元々UAオリジナルであったかのような錯覚を覚えることになる。UAの類まれな浸透力・調和力は,自らが望めば何にでも変貌してしまうような脅威を覚えさせるに十分である。

 静けさの中,俯瞰や,微笑,様々な心象風景を水墨画のような濃淡の筆遣いで描き切ってしまう“歌姫”UAを賛美するだけのテナーサックスを置き,菊地成孔がついに本格的なヴォーカルまで披露してしまった。
 無理もなかろう。UAは“魔物”なのだから…。

CURE JAZZ-2 そう。『CURE JAZZ』のメロディーの中心にはいつでもUAが存在している。
 『CURE JAZZ』のリズムの中心にはいつでもUAが存在している。
 こんなUA菊地成孔は,そして管理人は負けてしまった。負けるべくして負けてしまっただけである。

 【OVER THE RAINBOW】の詠唱による刻みからの「高音一発」な,5分過ぎからの圧倒的にダイナミックな表現力に“のたうち回ってしまう”。
 【ORDINARY FOOL】の「可憐さ」には,全てを投げ出し“泣いてしまいたくなる”。

  01. Born to be blue
  02. Night in Tunisia
  03. Over the rainbow
  04. Music on the planet where dawn never breaks
  05. Ordinary fool
  06. 嘆息的泡
  07. This city is too jazzy to be in love
  08. Luiza
  09. Honeys and scorpions
  10. Hymn of Lambarene
  11. I'll be seeing you
  12. Nature d'eau

(ビクター/JVC 2006年発売/VICL-61957)
(ライナーノーツ/菊地成孔)

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