
例によって,映画の本編を見ていない管理人にとって『オリジナルサウンドトラック『パビリオン山椒魚』』は,菊地成孔のニュー・アルバムとしての価値しかない。
全23トラックの菊地成孔の“ショート・ストーリー”が楽しめる。実際にCDを聴くまでは,そう思っていた。
本来,映画のサウンド・トラックとは,映像と言葉を補う存在である。しかし『オリジナルサウンドトラック『パビリオン山椒魚』』を聞いていると脳裏に映像が浮かんでくる。脳裏にストーリーが浮かんでくる。オダギリジョーと香椎由宇のセリフまで聞こえてくる。
そう。『オリジナルサウンドトラック『パビリオン山椒魚』』の「雑多ぶり」を耳にして,これはリアルな映像作品である,と思い直すようになったのだ。
矛盾していると思われそうだが,映画というのは不思議なもので,映像や言葉で伝えられるよりも,音楽で伝えられる方が制作者の意向を抵抗なく受け入れやすい。映像や言葉はその大半が誤解されて伝わっているように思う。
『オリジナルサウンドトラック『パビリオン山椒魚』』は,映画本編で冨永昌敬が伝えたかった映像を,本編以上に伝えてくる。この明確な映像イメージは間違いなく“鬼才”菊地成孔の手によるものである。
無論『パビリオン山椒魚』の監督は菊地成孔とは別にいる(冨永昌敬)。
ゆえに『オリジナルサウンドトラック『パビリオン山椒魚』』は『パビリオン山椒魚』の“メイキング・ビデオ”のようなものだと思う。
映画のラッシュを見終わって,一気呵成にサウンド・トラックを描いた菊地成孔の脳裏には,完成された映画の本編作品以上にリアリティある『パビリオン山椒魚』の残像が刻まれていたことだろう。
プロットを無視した『パビリオン山椒魚』の撮影シーンがピースとして組み合わさって,菊地成孔監督の“アナザー・ストーリー”『パビリオン山椒魚』が完成したのである。

この妄想が当たっているかどうかは,映画の本編を見て確かめてみるしかないのだが,その必要性を感じない。
“鬼才”菊地成孔は,とにかく引き出しの大きいアーティストであった。
01. CONRAD19 TAKE1
02. CONRAD19 TAKE2
03. CONRAD19 TAKE3
04. OMERTA
05. HER VISIONARY GYM SUITS
06. NIGHT AND CRABS
07. STRANGOLARE
08. HER INVISIBLE ORANGE TRAINS
09. FRAU ANNA BERTHA
10. CAN YOU X-RAY ME?
11. UN SOUFFLE MERVEILLEUX DE "KINJIRO"
12. SIGNORA USTINA
13. LE JAPONAIS DE GRAND PALAIS
14. MONTE VERITA
15. HOT-TEMPERED TV, STAMMERING TV
16. OPIUM DEN IN ROROROROPOPIPONGI
17. SALVATORE E LA SUA PROPRIA DI RINNOVAMENTO
18. IL CAMERATA DE "TIERRA DEL FUEGO"
19. 4 FOR VENDETTA
20. 1 MILLION YEN WHICH KENNETH COOPER DOESN'T KNOW
21. DER LUFTBALLONKAMPF
22. INCREDIBLE SHAMPOO BALLS
23. KEEP IT A SECRET
(イーストワークス・エンタティンメント/EWE 2006年発売/EWCD 0127)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/菊地成孔,冨永昌敬)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/菊地成孔,冨永昌敬)