THE GERSHWIN CONNECTION-1 「東のボブ・ジェームス」「西のデイヴ・グルーシン」と語られていたように,フュージョン界におけるデイヴ・グルーシンの存在感はとてつもなく大きかった。

 なにせ同じ鍵盤奏者であり“御三家”の一人であるチック・コリアを自己レーベル=GRPの所属アーティストとして“傘下に収めてしまった”という事実。わずか数年のことだったとしても,あのチック・コリアのボスだったという事実。

 管理人は年に数回考える。「東のボブ・ジェームス」「西のデイヴ・グルーシン」のままであれば,現在の「フォープレイ」のピアニストは,ボブ・ジェームスではなくデイヴ・グルーシンが務めていたはずである。

 デイヴ・グルーシンの「フォープレイ」とは可能性のない妄想などではない。そもそもリー・リトナーハービー・メイソンは「西のデイヴ・グルーシン」の盟友であったし,デイヴ・グルーシンには「前歴」がある!

 かつてデイヴ・グルーシンは,チック・コリアのボスであった時代に,チック・コリアに代わって「チック・コリア・エレクトリック・バンド」のピアニストを務めたことがある。
 そう。「デイヴ・グルーシン・アンド・フレンズ」名義の『THE GERSHWIN CONNECTION』(以下『ガーシュウィン・コネクション』)である。

 『ガーシュウィン・コネクション』には,ギターリー・リトナーキーボードドン・グルーシンヴィブラフォンゲイリー・バートンクラリネットエディ・ダニエルズトランペットサル・マーケスドラムソニー・エモリと,超一流の「フレンズ」たちが参加しているのだが,管理人が注目したのは,ピアノチック・コリアベースジョン・パティトゥッチドラムデイブ・ウェックルサックスエリック・マリエンサルの「チック・コリア・エレクトリック・バンド」のメンバー4人。

THE GERSHWIN CONNECTION-2 ズバリ『ガーシュウィン・コネクション』の真実とは「GRPの総帥」としてのデイヴ・グルーシンコネクションが爆発した,言わば『デイヴ・グルーシン・コネクション』。
 そしてその中心にはほぼ全曲に,デイヴ・グルーシンが「チック・コリア・エレクトリック・バンド」をそのまんま借りた「デイヴ・グルーシン・エレクトリック・バンド」の演奏がある。

 『ガーシュウィン・コネクション』における,デイヴ・グルーシンによる“乗っ取り”は大成功。“本家”「エレクトリック・バンド」を凌駕する素晴らしい演奏が続いている。
 ガーシュウィンの原曲の「いいとこどり」なオーバー・アレンジが特徴的なトータル・サウンドがキラキラ系であり,ジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックルも見事にデイヴ・グルーシンのトーンをボトムから作り上げている。

 そうしてノリノリで迎えるハイライトの【メドレー:ベス,ユー・イズ・マイ・ウーマン/アイ・ラヴス・ユー・ポーギー】で大泣きさせられてしまう。今の今聴いても感動してしまう。

THE GERSHWIN CONNECTION-3 【メドレー:ベス,ユー・イズ・マイ・ウーマン/アイ・ラヴス・ユー・ポーギー】における,壮大なストリングスと溶け合うデイヴ・グルーシンピアノの音色に関して言えば,チック・コリアだけではなく『THE MELODY AT NIGHT,WITH YOU』収録【アイ・ラヴス・ユー・ポーギー】におけるキース・ジャレットをも凌いでいる,と断言する!

 残る“御三家”の一人であるハービー・ハンコックは『GERSHWIN’S WORLD』で対抗するが,やはり歯が立たず…。
 恐るべし,デイヴ・グルーシンの“御三家”への3連勝! やはりデイヴ・グルーシンは超大物であった!

  01. THAT CERTAIN FEELING
  02. SOON
  03. FASCINATING RHYTHM
  04. PRELUDE II
  05. HOW LONG HAS THIS BEEN GOING ON?
  06. THERE'S A BOAT DAT'S LEAVIN' SOON FOR NEW YORK
  07. MY MAN'S GONE NOW
  08. MAYBE
  09. OUR LOVE IS HERE TO STAY
  10. 'S WONDERFUL
  11. I'VE GOT PLENTY O' NUTHIN'
  12. NICE WORK IF YOU CAN GET IT
  13. MEDLEY: BESS YOU IS MY WOMAN/I LOVES YOU PORGY

(GRP/GRP 1991年発売/MVCR-24)
(スリーブ・ケース仕様/ブックレット付)
(ライナーノーツ/デイヴ・グルーシン,油井正一)

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