
菊地成孔が,頑張れば頑張るほど“ムード・ジャズ”の痛々しさが伝わってくる。
「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」の,ストリングスとバンドネオンとハープの絡みがゴージャスなのに「チープ」に響く。本当はアナログなのに,いかんせんデジタルっぽいのだ。
『ESTUDIOS DE SINTOMA DE PERDIDA DE MEMORIA』(以下『記憶喪失学』)からは,お金かけている風でいて1万円コーディネートのような「チープ感」を感じてしまう。“アングラな成金ミュージック”をイメージしまう。
『記憶喪失学』からは,古き良きアメリカを真似ては喜んでいた,昭和の「陳腐な」空気感が聴こえてくる。
ズバリ「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」の真実とは,日本人が「西洋かぶれ」のジャズを演奏する“滑稽さ”を皮肉ったジャズ・バンドであろう。
極論になるが,日本のジャズは「J−ジャズ」とカテゴライズされる音楽であって,本場アメリカのジャズとはイコールではない。
本場アメリカのジャズを真似しているうちに,たまたま独自路線が花開いた「J−ジャズ」は,いつだってアメリカに向かって背伸びしてきた,王道ジャズの“生り損ない”であり,アングラの世界では「煌びやか」だと持ち上げられ,ブイブイ言わせている「三流の音楽」である。
そう。『記憶喪失学』の“ムード・ジャズ”とは「ジャズの都落ち」である。下のカテゴリーではTOPを張れる「無敵の音楽」である。
『記憶喪失学』のとは,実力的には「三軍のジャズ」を「2階級特進」させようとする菊地成孔流の「実験音楽」なのである。

しかし「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」は,他の人気バンドとは何かが違う。育ちが違うし時代が違う。
今風な感じを頑張って演出しているが,仕上り具合が安っぽい。1万円コーディネートのような「チープ感」を感じてしまう。「銀座のママ」風な駄盤である。
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(イーストワークス・エンタティンメント/EWE 2008年発売/EWCD-0153)
(デジパック仕様)
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