THE SIRENS-1 管理人がクリス・ポッターの存在を知ったのは,パット・メセニークリス・ポッターを『UNITY BAND』のフロントマンに指名したことに始まった。

 クリス・ポッターって誰? ネットで調べてみると情報が出るわ出るわ。えっ,結構,有名なの? えっ「ポスト・マイケル・ブレッカー」と呼ばれていたの?
 …と言うことで,天神のタワーレコードへ直行してGETしてきたのが『THE SIRENS』(以下『ザ・サイレンズ』)であった。

 初めて聴いたクリス・ポッターの印象は「テクニシャン」。確かに“超絶技巧”な「ポスト・マイケル・ブレッカー」である。マルチ・リード奏者として全ての楽器を完璧にコントロールしている。
 しかし『ザ・サイレンズ』を繰り返し聴き込んでいくうちに,クリス・ポッターの魅力は“超絶技巧”以外のところにあると思うようになった。

 クリス・ポッターは確かに“唯一無二の声を持つ”「ポスト・マイケル・ブレッカー」であった。
 かつてのマイケル・ブレッカーが,まずテクニックで注目され,その後,独特の“マイケル節”で人気を集めたように,クリス・ポッターも,まずはテクニック目当てで注目され,その後,独特の“クリポタ節”でブレイクしたように思う。

 なぜならば『ザ・サイレンズ』の中に存在する2つの縛り,1つは「オデュッセイア」のコンセプト・アルバムとしての縛り,もう1つはECMのレーベル・カラーという伝統の縛りを振り解いた,実にスケールの大きな“クリポタ節”がアルバム全体を支配していたからだ。

THE SIRENS-2 「オデュッセイア」とは,古代ギリシャの詩人ホメーロスが残した長編叙事詩。ECMとは,ご存じ,静寂で無調で温度低めのクリスタル・サウンド。

 コンセプト・アルバムの枠組みを呑み込み,ECMのサウンド・カラーをものみ込み,大きな懐構えのテナーサックスで“クリポタ節”を吹き上げている。

 『ザ・サイレンズ』の,抑制の効いたアグレッシブなフレージングの連続技に「静と動を行き交う」クリス・ポッターテナーサックスが「濃密な音空間」に“浮かんでいる”。

 個人的には『ザ・サイレンズ』の感想をパット・メセニーにも聞いてみたいと思う。きっとパット・メセニーも『ザ・サイレンズ』にご満悦!?

  01. Wine Dark Sea
  02. Wayfinder
  03. Dawn (With Her Rosy Fingers)
  04. Sirens
  05. Penelope
  06. Kalypso
  07. Nausikaa
  08. Stranger At The Gate
  09. Shades

(ECM/ECM 2013年発売/UCCE-1137)
(スリーブケース仕様)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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