
デイヴ・リーブマンの“激しくも軽やかなサックス”があってこそのマイルス・デイビスのあのトランペットなのである。
そんなデイヴ・リーブマンが“ブラジル音楽への憧れ”を表現した『NEW VISTA』(以下『ニュー・ヴィスタ』)には“激しくも軽やかな”往年のデイヴ・リーブマンの個性が全開である。
直接的な「ブラジル音楽」の表現としてはパーカッションにカフェが参加したブラジルのリズムにあろうが,いやいや,細かな部分で,あの時代のデイヴ・リーブマンを感じてしまった。
恐らくこれって『ニュー・ヴィスタ』の骨格を成す音楽がシンセサイザー・ベースで作られている影響であろうが,デイヴ・リーブマンの考える「ブラジル音楽」と称するよりも,デイヴ・リーブマンの考える「90年代の“電化マイルス”」と称したほうが読者には伝わりやすい。
「70年代の“電化マイルス”」の延長線上にある「90年代の“電化マイルス”」としての“激しくも軽やかなサックス”が新鮮に響いている。
そう。サイドメンの演奏こそ,最新テクノロジーを駆使したブラジル仕様に仕上げられているが,主役であるデイヴ・リーブマンのソプラノとテナーは70年代にタイムスリップした印象のジャズ。

『ニュー・ヴィスタ』の空気感は“軽やかな”デイヴ・リーブマンならではの唯一無二な演奏である。しかもシリアスで“激しい”緊張感を伴っている。
日々,未知の音楽に足を踏み入れていたからこそ“激しくも軽やかに”立ち振る舞っていたデイヴ・リーブマンのベクトルが“ブラジル音楽への憧れ”という新しいベクトルによって,マイルス・デイビスが向かったと同じく,左斜め上の世界へと向かっている!
01. New Vista
02. Estate
03. Real Dreams
04. So Far, So Close
05. Christmas Socks
06. Beauty and the Beast
07. Jungle Glide
08. Zingaro
09. The Gross Man
(徳間ジャパン/ARKADIA JAZZ 1997年発売/TKCB-71571)
(ライナーノーツ/チャック・バーグ,デイヴ・リーブマン)
(サンプル盤)
(ライナーノーツ/チャック・バーグ,デイヴ・リーブマン)
(サンプル盤)
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