HARD WIRED-1 ジャズフュージョン・マニアたちのよくやる遊びに「ブラインド・テスト」がある。「ブラインド」とは目隠しの意味。何の情報も与えずに音源を聴かせて,それが誰の演奏か?を当てる,意地とプライドを賭けた「ガチンコのお遊び」である。当たれば鼻高々。外せば地獄。心理戦も含んだ真剣勝負なのである。

 …で,いろいろと遊んだものだが,個人的な「ブラインド・テスト」の一番の思い出と言えば『HARD WIRED』(以下『ハード・ワイアード』)である。

 だって,あの野郎,ズルすぎる。あの順番で出してきたら,誰だって?「チック・コリア・エレクトリック・バンド」だと思うだろう?
 そう。『ハード・ワイアード』は「チック・コリア・エレクトリック・バンド」ではなくデイブ・ウェックルバンドCDであった。チック・コリアの変化玉を聴かされまくって頭脳戦に負けたのだった〜。

 翌日,未所有であった『ハード・ワイアード』をHMVに買いに行き,はやる気持ちを落ち着かせて聴き直した『ハード・ワイアード』に,改めて「チック・コリア・エレクトリック・バンド」を感じてしまった。

 「ブラインド・テスト」の一番の思い出とはこのことである。
 デイブ・ウェックルという答えを知った上で,冷静に聴き直してみたはずなのに,自分の頭脳が導き出した答えは,まさかの2回連続「チック・コリア・エレクトリック・バンド」だったのだ。この自分自身の反応に一番驚いてしまった!

 そしてこう思った。「チック・コリア・エレクトリック・バンド」のフィーリング,アイデンティティとは,チック・コリアではなくデイブ・ウェックルに負うところが大きかったんだ!

 やはり「チック・コリア・エレクトリック・バンド」の肝は,ド派手で機械的でドンピシャなエレクトリック同期生ドラムの手数王にして,基本はタイトでグルーヴするドラムにあったんだ〜!

HARD WIRED-2 『ハード・ワイアード』について語りたいのは,この一点だけ!

 神保彰ライナーノーツで絶賛するデイブ・ウェックルが,アンソニー・ジャクソンジョン・パティトゥッチジェームズ・ジーナスの凄腕ベーシスト3人と生み出すフュージョンを超えたPOPなリズムが,世界最高レベルのバンド演奏でとにもかくにも盛り上がります!

  01. HARD-WIRED
  02. AFRIQUE
  03. DIS' PLACE THIS
  04. IN FLIGHT
  05. CRAZY HORSE
  06. JUST AN ILLUSION
  07. WHERE'S TOM?
  08. IN THE POCKET
  09. TRIBUTE

(GRP/GRP 1994年発売/MVCR-180)
(ライナーノーツ/神保彰)

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