
この“縛り”は今後もきっと崩さないつもり。なぜならば,日本は「世界一のジャズ大国」。国内盤の充実度は世界一という建前。しかし本音としては,輸入盤の大海に出てしまったら最後,生きて戻っては帰れない。輸入盤に手をつけるのが恐いのだ〜。
日本のジャズ・ファンに根付いている「国内盤至上主義」は,レコード会社とジャズ・ファンとの紳士協定というか,暗黙の了解というか,レコード会社は日本国内へ才能豊かなジャズメンを紹介する義務を負わせるのがジャズ界のルール。
そ・れ・で・責任を感じた?キングレコードのエレクトリック・バード・レーベルが,大人気フュージョン系ピアニスト=デビッド・ベノワの招聘へと動いた!
アメリカでは7枚のアルバムをリリース済みの実績あるデビッド・ベノワでさえ,日本市場を攻略するためには国内盤のリリースが不可欠だった。たった1枚の国内盤のリリースがデビッド・ベノワのブレイクを保証することになるのだった。
エレクトリック・バードの目論見は大当たり! 国内企画盤であるデビッド・ベノワのベスト・チューンの再演盤『SUMMER』(以下『サマー』)の1枚で,日本のフュージョン・ファンのハートを鷲掴み!
ピアノ・フュージョンがスムーズ・ジャズへと徐々に移行していった音楽シーンを語る上で『サマー』の発売前は無名であったデビッド・ベノワが今では絶対的に“外せない”存在となったのは皆さんご承知の通り。

ブラジル風のダンサブルなナンバーや疾走感あふれるフュージョンからロマンティックなバラードまで,デビッド・ベノワの歌心あふれる瑞々しいピアノが鳴っている! デビッド・ベノワの「ハイセンスのエッセンス」が溢れ出ている!
デビッド・ベノワのマイナーだったAVI時代の名曲を通して聴いていると,軽く爽やかでコンテンポラリーなピアノを弾かせたら,デビッド・ベノワ“最強説”を信じてしまう。
個人的にはコンテンポラリーなピアニストはフィリップ・セスとデビッド・ベノワが“ワン・ツー”なのだと今の今でも信じている。
01. SOME OTHER SUNSET
02. OSLO
03. OCEANA
04. CAN YOU IMAGINE
05. HERMOSA SKYLINE
06. IF I COULD REACH RAINBOWS
07. STAGES
08. LIFE IS LIKE A SAMBA
09. I REMEMBER BILL EVANS
(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 1986年発売/KICP 38)
(ライナーノーツ/松下佳男)
(ライナーノーツ/松下佳男)