TREASURE HUNTER-1 『TREASURE HUNTER』を聴いて,まず感じたことは「完成度の高さ」である。ここまで“洗練された”J−フュージョンの登場は久しぶりではなかろうか?

 ズバリ『TREASURE HUNTER』の正体とは5人組“ザ・マスクマン”スクェア名義の王道フュージョンである( ← アニメなマスクマン・ジャケットに掛けてみました )。

 個人的には『TREASURE HUNTER』でのスクェアの“らしさ”とは,バンドの2人のフロントメン,安藤正容ギター伊東たけしアルトサックスEWIが鳴っている時間だけだと言い切っても良い。

 過去のアルバムを例として語るなら『TREASURE HUNTER』に,あの時代の『NATURAL』を思い重ねてしまった。
 アメリカ進出を目指していたT−スクェアが,全米発売にこぎつけた『NATURAL』…。リッピントンズラス・フリーマン・プロデュースの『NATURAL』…。

 そう。『TREASURE HUNTER』は,従来のスクェア・サウンドの枠を超え,J−フュージョン枠をも飛び超えた“ワールド・クラス”の1枚として選ばれるべき「スムーズフュージョン」の名盤である。

 でも,だからこそ惜しまれる「T−スクェアの個性の薄まり」。原因はバンドのフロントメンである安藤正容伊東たけしが,河野啓三坂東慧の同列で演奏した結果だと思う。あるいはベース田中普吾の存在感の高まりにあると思う。

 ズバリ『TREASURE HUNTER』におけるバンドの比率は,安藤正容伊東たけし河野啓三坂東慧田中普吾=5:5になっている。
 ここまで安藤正容伊東たけしが献身的に“バンドの一員”として機能したのは『NATURAL』以来ではなかろうか?

 長年のスクェア・ファンとしては,T−スクェアの“黄金比”は,安藤正容伊東たけし河野啓三坂東慧田中普吾=6:4でなければならないと信じている。5:5になると「T−スクェアの個性」が急激に薄められてしまう。

 これから書くのは坂東慧への注文でもなんでもない。坂東慧の“スクェア愛”は『TREASURE HUNTER』からも十二分に伝わってくる。
 『TREASURE HUNTER』の「完成度の高さ」は,単衣に坂東慧の“成熟”の賜物である。『TREASURE HUNTER』が『NATURAL』してしまったのは,坂東慧がついにラス・フリーマン・クラスの高みへと達した結果なのかもしれない。

 『TREASURE HUNTER』において,坂東慧T−スクェアを「内からではなく外から見つめている」ように思う。T−スクェアをCOOLに分析して,世界水準に足りない何かを付けたし,世界水準に要らない何かを引いている。

 そう。現「河野坂東時代」のT−スクェアは,敢えてチャレンジする必要などない圧倒的な地位とバンド・サウンドを有する,世界有数のフュージョン・バンドに肩を並べたのだと思う。
 リッピントンズ…。スパイロ・ジャイラ…。イエロージャケッツ…。フォープレイ…。そしてT−スクェア…。

 でも繰り返す,だからこそ惜しまれる「T−スクェアの個性の薄まり」。『TREASURE HUNTER』とは「宝探し」の意味ではなかったのか? もっと「冒険」すべきではなかったのか?

TREASURE HUNTER-2 管理人には『TREASURE HUNTER』は「安定」に思える。『TREASURE HUNTER』は現「河野坂東時代」の集大成に思える。

 全力でアクセルを踏み込んでいない『TREASURE HUNTER』が何だか物足りない。ワクワク感がない。おっとりして,丸くなってしまった。
 『TREASURE HUNTER』を聴いていると,いつものT−スクェアで感じる春夏ではなく“秋”を感じてしまう。哀愁を帯びている。真剣に生真面目に作り込みすぎて,安藤さんと伊東さんが“暴れ回る”スペースが足りていない。う〜む。これって欲張りすぎでしょうか?

 管理人の結論。『TREASURE HUNTER批評

 『TREASURE HUNTER』は,フュージョン好きとしては,緻密なアレンジでこれ以上を求めようがないぐらいの快作だと認める。
 ただし,フュージョンではなくT−スクェア好きとしては,どうにももどかしい。明るく楽しいハッピー・ソングは【TREASURE HUNTER】【CHOPS!!】【SCISSORS PAPER ROCK】の3トラックのみ。【LAST SCENE】は「涙ちょちょぎれる」名バラード伊東たけし河野啓三の名コンビ再び〜。あれ,管理人は無いものねだりなのか?

 言葉が適切かどうか,この言葉で伝わるかは分からないが「アナログ」へ帰ってきてほしい。「アナログ」へ留まっていてほしい。
 T−スクェアのデジタル路線よ,この辺で止・ま・っ・て・く・れ〜。

  DISC 1 (CD)
  01. Treasure Hunter
  02. Chops!!
  03. Metro 7
  04. Night Light
  05. 7-6-5
  06. Pearl of the Adriatic
  07. Double Rainbow
  08. Scissors Paper Rock
  09. Last Scene

  DISC 2 T-SQUARE LOOK BACK second half of 2015 (DVD)
  01. Prologue
  02. T-SQUARE Live at「VOYAGE to Jarasum」
  03. Truth
  04. Travelers

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