
3人ともファーストネームに“マサ”がつくところからきた“マサちゃんズ”(マサちゃんズには,これまた略称があって“M’s”表記とはややこしい)であるが,ズージャなネーミング通りの“変則ピアノ・トリオ”は隠れ蓑である。
マサちゃんズとは,ただ単純に佐山雅弘の内にふつふつと湧き上がる「小粋にジャズ・スタンダードを演奏したい」という欲求を満たす手段としてのピアノ・トリオである。
表面ではふざけているように聴こえるのだが,その実,佐山雅弘のアドリブがどこへ向かおうとも,ちゃんとリズムが先回りしてエンディングを待ち受けている。これぞ“ジャズの小品”の完成形だと一人唸らされてしまった。
だから,どうせダジャレでふざけるのなら,キース・ジャレットのスタンダーズ・トリオにかけて,マーズ・ジャレット・トリオとかM’s・ジャレット・トリオとか,スタンダーズを連想させる方が良かったと思う。
マサちゃんズが演奏するスタンダードは,基本キース・ジャレットのピアノ・トリオと同様にデフォルメされているのだが,ヘッド・アレンジ以降の展開は全てが即興的なのに,3人のインタープレイには「ここはこうでなければならない」という絶対の確信が演奏から滲み出ている。
スタンダードへの美意識を突き詰めたピアノ・トリオにして,アクロバティックなのが佐山雅弘流なのであろう。
マサちゃんズの結成10周年にしてデビュー作となった『FLOATIN’ TIME』(以下『フローティン・タイム』)の“静と動”の落差と言ったら…。
そう。『フローティン・タイム』の真髄とは「徹底的に楽しく,徹底的に美しく,徹底的にリラックス」。これである。おじさんの魅力全開である。モノホンのオヤジ・ジャズは「ダサカッコいい」のである。
【クレオパトラの夢】と【アントニーの叫び】が合体した【CLEOPATORA’S DREAM/ANTONY’S SCREAM】と【テイク・ファイヴ】と【A列車で行こう】が合体した【TAKE FIVE A−TRAINS】の見事なチェンジぶりの脱帽する。こんなの頭で分かってはいても拍が取れない〜。
スネア一発&鍵盤一音で違和感なしに変速する無段階ギアの場面展開の構図が素晴らしい。

『フローティン・タイム』のハイライトは,上述の有名どころのツボにピタりハマッタ“粋なスタンダード”なのだが,この幕の合間に流された感じの“小品バラード”があればこそ。
【FLOATIN’ TIME】【WHEN SUNNY GETS BLUE】【SETEMBRO(BRAZILLIAN WEDDING SONG)】を聴いていると,仕事なんかどうでもよくなってしまう恐ろしさを感じてしまう管理人…。
ライナーノーツで,あの村上春樹氏も絶賛していますよっ。アルバム・ジャケット“M’s”のロゴ・マークは和田誠氏の書下ろしですよっ。
01. CLEOPATRA'S DREAM / ANTONY'S SCREAM
02. FLOATIN' TIME
03. JOY SPRING
04. GIRL TALK
05. IT'S ONLY A PAPER MOON
06. FINE ROUGE
07. DADDY BLUE
08. TAKE FIVE A-TRAINS
09. WHEN SUNNY GETS BLUE
10. IT MIGHT AS WELL BE SPRING
11. SETEMBRO
12. SWINGIN' ON A STAR
13. THE FIRST CRY
MASAHIRO SAYAMA TRIO M's
MASAHIRO SAYAMA : Piano
MASATOSHI KOI : Acoustic Bass
MASAHIKO OSAKA : Drums
(ビクター/3 VIEWS 2002年発売/VICJ-60995)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/佐山雅弘,村上春樹)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/佐山雅弘,村上春樹)
イザヤ書65章 新しい天と新しい地
林栄一 『モナ・リザ』