SKETCH OF SEASON-1 「日本のキース・ジャレット・トリオ」として「小粋にジャズスタンダードを演奏してきた」マサちゃんズの5枚目『SKETCH OF SEASON』(以下『スケッチ・オブ・シーズン』)が,何やら騒がしい。異変である。

 『スケッチ・オブ・シーズン』のマサちゃんズは,ピアノ佐山雅弘ベース小井政都志ドラム大坂昌彦による従来通りの3人編成。メンバーに変更はない。
 なのに『スケッチ・オブ・シーズン』のマサちゃんズは,4枚目までの「M’s(マサちゃんズ)フィーチャリング 佐山 雅弘」名義ではなく「佐山雅弘トリオ M’s(マサちゃんズ)」名義でのリリース。事件である。

 ズバリ『スケッチ・オブ・シーズン』の「M’s」は,マサちゃんズであってマサちゃんズではない。そう言える2つの理由がある。
 1つ目の理由は「M’s」のモットーであった“ジャズスタンダードの括り”が撤廃されていること。2つ目の理由は「M’s」単体の「佐山雅弘トリオ」の演奏が半分に減り,残りの半分はゲスト入りであること。

 そう。内容の大幅な変更がバンド名の変更に象徴されている。佐山雅弘が『スケッチ・オブ・シーズン』で“フィーチャリング”ではなく“リーダー”となっているのは,アルバム全曲が佐山雅弘の作曲だから。何と!モットーとしてきたジャズスタンダードは1曲も収録されていないから。

 この内容では「佐山雅弘トリオ」に「M’s(マサちゃんズ)」が追記されただけマシ,とでも言うべきもので『スケッチ・オブ・シーズン』の本質は,佐山雅弘ソロ・アルバムそのもの…。

 『スケッチ・オブ・シーズン』を,佐山雅弘ソロ名義だと位置付けるなら,ゲストとして佐山雅弘と交流のあった島田歌穂新妻由佳子吉田慶子ヴォーカリスト3人と太田剣浜崎航三木俊雄サックス奏者3人が加わったことにも納得がゆく…。

 さて,ここで問題になるのは『スケッチ・オブ・シーズン』での「NEW M’s」を「佐山雅弘よ,イニシアティブをとってくれてありがとう」となるのか「佐山雅弘よ,なぜマサちゃんズのDNAを捨てたのか」のどちら側で受け止めるか?であろう。

SKETCH OF SEASON-2 「日本のキース・ジャレット・トリオ」としてマサちゃんズを押してきた大ファンとしては,スタンダード・トリオからオリジナル・バンドへのスタンスの変遷を,佐山雅弘の「裏切り」であるかのように否定的に受け取った。

 でも5回,10回と『スケッチ・オブ・シーズン』を繰り返し聴いているうちに,佐山雅弘の楽曲を全面に打ち出したオリジナル・バンドもマサちゃんズの“もう1つの顔”だと思うようになった。そう言えば以前に,こんなマサちゃんズも聴いてみたい,と思ったことを思い出した。

 管理人の結論。『スケッチ・オブ・シーズン批評

 佐山雅弘トリオの『スケッチ・オブ・シーズン』は,キース・ジャレット・トリオでいうところの『CHANGES』。

 ジャズスタンダードを“一休み”した佐山雅弘トリオが,従来とは違った意味で真にクリエイティブ。
 この上なく音楽的に合いまくる,マサちゃんズの抜群のコンビネーションそのままに“佐山ワールド”が新鮮に響いている。

  01. HARVEST
  02. THE END OF SEASON
  03. BLUE KEYS
  04. LOVE ME A LITTLE
  05. SURF THE TURF
  06. IN YOUR QUIET DREAM
  07. DEEP BLUE
  08. YOU HIDE SOMETHING
  09. BLOW THE FLOW
  10. CHASE THE SHADE
  11. RIGHTEOUS MAGNOLIA
  12. PRIMAVERA

(ビクター/JVC 2008年発売/VICJ-61554)
(ライナーノーツ/佐山雅弘)

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