
管理人が初めて『BEYOND THE EARTHBOUND』を聴いた時,連想したのが「PRISM」の『UNCOVERED』。
これが本当にライブ盤なのか? 緻密な質感がスタジオ録音を超える圧倒的な演奏力である。もしこの演奏をブラインド・テストで聴かされたら,まずライブ盤とは思わない。
ただし,よ〜く聴くと,難波弘之の超人的なキーボード・ソロ,和田アキラの超人的なギター・ソロ,永井敏己の超人的なフレットレス・ベース・ソロ,長谷川浩二の超人的なドラム・ソロから“殺気”のような緊張感が聴こえてくる。ストイックすぎるソロ廻しが爆発している。
この緊張感漲るアドリブこそが,バンド・メンバーだけではなく,一音も聴き逃すまい,と集まった観客からのプラスのプレッシャー。『BEYOND THE EARTHBOUND』に記録された「ライブ盤としての証し」であった。
だから余計に『BEYOND THE EARTHBOUND』の“完璧なるバンド・アンサンブル”に驚愕した。百戦錬磨の強者4人の“丁々発止”が書き譜のように連動している。4人の自由なアドリブのうねりが絡み合い,ついには自由度を失いバンド・サウンド化していく瞬間は“悶絶”ものである。
特に自分中心の「PRISM」とは勝手が異なる,難波弘之中心の「EXHIVISION」の展開に“押し引きしながら”&“駆け引きしながら”自分のフレーズをねじ込んでいく和田アキラの“武骨なギター”に心を躍らされてしまう。
一発触発の雰囲気を醸しつつ,きっちりとキーボードを下支えする和田アキラの荒々しいプログレッシブ“ジャズ”ギター! 抑制された状態からの,ためにためた,和田アキラの下剋上に“ロック魂”ここにあり!

空いた音空間を埋めるアイディアはメンバーの「意見交換の場」である。思い思いの自分のアイディアを「発言する権利」が与えられている。そこに「バンドの個性」が表われているのだから,自分の意見が取り入れられた“完璧なるバンド・アンサンブル”にも満足できるだろうし,仮に自分の意見がスルーされたとしても,他のメンバーの意見を邪魔しない展開に幸福感を覚えたことだろう。バンドが生み落とす一音一音のクリエイティブな作業に参加している意識があった…。
こんなにスムーズなライブ演奏も珍しい。バンドの全員がサウンド・クリエイターの意識を持っている。だから実際には後ろに引いている時間も,気持ちの上では前に出ている。いいや,次の出番に備えて裏でパワーを蓄えている。
『BEYOND THE EARTHBOUND』をステージで演奏していた,難波弘之,和田アキラ,永井敏己,長谷川浩二の頭の中の音楽シナプスは“フル回転”していたに違いない。
美しさや激しさといった楽曲本来が持つ魅力を充分に引き出した,最高クオリティのプログレッシブ・フュージョンが素晴らしい。
01. BEYOND THE EARTH
02. OTHER SIDE
03. Lilith
04. DOUBLE DOWN
05. Touch 419
06. ICE BOUND
07. Politician
08. FAERIE TALE
09. DEUCE DRIVE -ActII-
(ユニバーサル・ミュージック/UNIVERSAL STRATEGIC MARKETING 2008年発売/UICZ-4184)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/橋雅人,和田アキラ,難波弘之,永井敏己,長谷川浩二)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/橋雅人,和田アキラ,難波弘之,永井敏己,長谷川浩二)