
そんなデヴィッド・サンボーンが「裏通り」を寄り道してみたのが『BACKSTREET』(以下『バックストリート』)である。
ただし,デヴィッド・サンボーンの『バックストリート』は“原宿”の「表参道」ではなく「竹下通り」のような“雑踏フュージョン”である。
つまり「裏通り」は「裏通り」でも実質は「メイン・ストリート」。文化の本当の中心がサブカルであるように「裏通り」の『バックストリート』が「デヴィッド・サンボーン&マーカス・ミラー」の「裏の裏」→「王道」なのである。こんな逆転現象が最高に面白い!
『バックストリート』のベーシック・トラックはマーカス・ミラーの打ち込みである。打ち込みだとバカにするなかれっ。
マーカス・ミラーが準備した『バックストリート』は並みの打ち込みではない。「裏通り」の“雑踏”をモチーフにしたかのようなグルーヴを感じさせる,スティーヴ・ガッドのドラム,ラルフ・マクドナルドのパーカッション,ハイラム・ブロックとバジー・フェイトンのリズム・ギターを取り入れた“生っぽい”打ち込みなのである。
そう。『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』に選曲された人気曲はないけれども『バックストリート』は『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』「特需」など不要の大名盤!
『バックストリート』の幅広い音楽性,日陰なのに陽が当たるとカラフルに変化する音楽性こそ「デヴィッド・サンボーン&マーカス・ミラー」の「蜜月状態」が生み落とした大名盤! 楽曲も演奏も全てが「裏通り」というテーマにピタッとハマッタ大名盤!
例えば【I TOLD U SO】での重厚なリズムは,都会の路地裏にまでは入り込むタクシーのエンジオン音であるし【BACKSTREET】は,ちょっと危険な夜中にたむろする若者たちの会話のようである。都会の喧騒こそが“サンボーン節”のカッコイイBGM…。
ライブで取り上げるのは難しいだけ?

『ハート・トゥ・ハート』で“栄光の三段跳び”のスタートラインについた“メロー・サンボーン”が『ハイダウェイ』でHOP〜『夢魔』でSTEP〜“孤高の”『ささやくシルエット』を飛ばして『バックストリート』で大JUMP!
ズバリ『バックストリート』こそが,ジャズでもなくフュージョンでもなく,R&BでもAORでもない「デヴィッド・サンボーン&マーカス・ミラー」という「ジャンル」の代表作である。間違いない。
01. I TOLD U SO
02. WHEN YOU SMILE AT ME
03. BELIEVER
04. BACKSTREET
05. A TEAR FOR CRYSTAL
06. BUMS CATHEDRAL
07. BLUE BEACH
08. NEITHER ONE OF US
(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1983年発売/WPCP-3562)
(ライナーノーツ/青木和富,本多俊之)
(ライナーノーツ/青木和富,本多俊之)