
しかし,山本英次を,そして「お洒落なジャズトリオ」を語ろうと思うと,音楽の良さとか演奏の良さの前に,どうしても「音の良さ」にフォーカスを当ててしまうことになる。
「お洒落なジャズトリオ」のライブ盤『OJT IN KOBE』(以下『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』)も「STEREO」誌2000年度「最優秀録音第2位」受賞の「超高音質」盤。
管理人的にはオーディオ・マニアが部屋に遊ぶに来た時の大体の1枚目が『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』の存在意義である。
「お洒落なジャズトリオ」とは,ピアノの山本英次,ギターの吉田啓二,ベースの田野重松による,所謂,オールド・ピアノ・トリオ。
ドラムレスゆえ,大人し目のジャズ・スタンダード集に聴こえるのだが,リズム楽器としてのギターがスイング感に与える役割は絶大であって,偶然ではなく,山本英次の「超高音質」ピアノ・トリオにマッチした,必然のオールド・スタイルなのである。
だ〜って,山本英次こそ「知る人ぞ知る」存在であるが,吉田啓二? 田野重松? それって誰状態の「お洒落なジャズトリオ」なのだから,ライブであってもソロが前面に突出しない,テーマ重視のピアノ・トリオ。
素直に楽器の魅力を,素直に楽曲の魅力を伝えることをモットーとしている節がある。これぞ「超高音質」録音の最適ソースなのだと思う。
客席のざわめきなど意に介さない,楽器のすぐ隣りにセッティングしているであろうマイクが拾った音源がゾクゾクくる。ピアノの弦,ギターの弦,ベースの弦のこすれ具合がリアルすぎて,これは顕微鏡で拡大したような音である。実物以上に響かせている。
そう。『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』の聴き所は,ピアノの弦,ギターの弦,ベースの弦の“語らい”である。
きれいに分離した3つの楽器の音が全部ハッキリ聴き取れるから“会話のような演奏”に聞こえてしまう。インタープレイのやり取りが,手探りではなく,手に取るように見えるので,タネ明かしなしの臨場感に溢れたライブならではの迫力を感じる。
大袈裟に言えば,セッティングされたマイク位置に設けられた,会場の最前列よりも最前列の特別豪華観覧席で生音を聴いているかのような,最高に贅沢な音楽会!
ノン圧縮,ノンフィルター録音ゆえに,アンプのボリュームを上げて聴くのがとっても楽しい『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』。この「超高音質」がオーディオ・マニアの心をくすぐるんだよなぁ。クセのない生音とクセのない演奏を両立させてしまいたくなるんだよなぁ。
オーディオ・マニアの友人たちは,我が家からの帰り道,早い人で当日中に『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』を注文しているんだよなぁ。

純粋に「音の良さ」を追い求めていただけだったのに,いつしか「超高音質」ではなく,山本英次の“音楽的なピアノ”に魅了されてしまったが最後,ピアノ中心のチューニングのせいで,全体のバランスが狂い始めてしまう。
管理人はそれでも,そんな自分にムチ打って頑張って抵抗してきた方だと思う。でも,良い音を追及したい,という自分をついにどこかであきらめてしまった。
「お洒落なジャズトリオ」のお三方には大変失礼な表現と思うが“個性の薄い”『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』と出会って,オーディオ・マニアとしては後退してしまったが,デフォルメされていない“真水の”ジャズ・スタンダードの面白さが以前よりも分かるようになったと思う。この「心境の変化」に1人大喜び!
だ〜って,オーディオって,音楽の楽しさを伝えるための道具じゃん!
なお,紹介が最後になってしまったが,山本英次+吉田啓二+田野重松の「お洒落なジャズトリオ」は,時にオールド・ピアノ・トリオ・スタイルから,コルネット+バンジョー+チューバの「“変則”○○トリオ」に変身してしまう(【BASIN STREET BLUES】)。
このコルネット+バンジョー+チューバの音色も最高すぎて,本職真っ青のスーパー・オーディオの世界が広がている〜っ。
01. MILLENNIUM BLUES
02. GIRL FROM IPANEMA
03. AUTUMN LEAVES
04. MISTY
05. ELEGANT TIME
06. THE GIFT
07. FOREVER MORE
08. HEARTFULL PARTY
09. BLACK ORPHEUS
10. BASIN STREET BLUES
(YPM/YPM 2000年発売/YPM-010)
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