
そう。『TIMEAGAIN』(以下『タイムアゲイン』)の真実とは,ジャズの名門レーベル=ヴァーヴに主導権を握られたコンテンポラリー・ジャズ・アルバムであって,従来のデヴィッド・サンボーンの音楽ではない。
デヴィッド・サンボーンのジャズ・アルバムと来れば『ANOTHER HAND』が連想されるのだが『ANOTHER HAND』には,デヴィッド・サンボーンの“未来”があった。気概を感じたものだった。だから“サンボーン・キッズ”も受け入れることができた。
対する『タイムアゲイン』には,ヴァーヴの思い描く“未来”がある。ズラリと並んだ有名ヒット・チューンのカヴァーからは,デヴィッド・サンボーンのブランド力で,多くのフュージョン・ファンをコンテンポラリー・ジャズの世界へと引き入れたい,そんなレーベルの計算高さが透けて見える…。
まぁ,これはこれでいい。管理人は基本ヴァーヴの創るジャズが大好きだし,コンテンポラリー・ジャズも大好きなのだし…。
でも『タイムアゲイン』は受け入れられない。どうにも納得いかない。
このモヤモヤとした思いはヴァーヴに対してではない。かってのデヴィッド・サンボーンであれば,自分の意に添わずに仕組まれたコマーシャルなセッティングでも,一音で“ちゃぶ台をひっくり返す”ようなカリスマがあった。
それが今回はどうだろう。『タイムアゲイン』でのデヴィッド・サンボーンは元気なく&あっけなく「ジャズメン・オールスターズ」に寄り切られている。え〜っ,デヴィッド・サンボーンって病気なのか?
全世界の“サンボーン・キッズ”はうすうす感じている。『タイムアゲイン』でのデヴィッド・サンボーンモデル・チェンジは,デヴィッド・サンボーン自身が望んだことであろう。
もはや“イケイケ”では走り続けられないことをデヴィッド・サンボーン自身が一番理解している。ジャズの名門レーベル=ヴァーヴ移籍はそんな自身の衰えを隠すための「隠れ蓑」なのである。ヴァーヴ移籍は悪評は全てヴァーヴのせいにするための戦略なのである。

流石のスティーヴ・ガットである。流石のクリスチャン・マクブライトである。こんなにも「間」を聴かせられるデヴィッド・サンボーンのアルバムはこれまでなかった。ゆったりとしたGROOVEに乗った“サンボーン節”がまだまだ第一線で通用することが証明されている…。
管理人の結論。『タイムアゲイン』批評。
『タイムアゲイン』は,アルト・サックス奏者=デヴィッド・サンボーンにとっての「人生の曲がり角」。
本格派から軟投派へ。速球派から変化球投手へ。フュージョンからコンテンポラリー・ジャズへ。
デヴィッド・サンボーンはまだまだ現役で通用する。ローテーション投手として10勝はできる。なせならバックが凄いから!
常勝軍団=ヴァーヴ入団へ一言! デヴィッド・サンボーンよ,伝家の宝刀“泣きのブロー”でエースを狙え!
01. comin' home baby
02. cristo redentor
03. harlem nocturne
04. man from mars
05. isn't she lovely
06. suger
07. tequila
08. little flower
09. spider b.
10. delia
(ヴァーヴ/VERVE 2003年発売/UCCV-1043)
(ライナーノーツ/青木和富,鈴木雄一)
(ライナーノーツ/青木和富,鈴木雄一)