
その時のオファーの理由は日野賢二が,日野皓正の息子だし,ジャコ・パストリアスの弟子だし,マーカス・ミラーの高校の後輩だし…。
NO! そんな肩書以上に何よりも日野賢二が「フロム・ニューヨーク」なパンチあるベーシストだったから!
(本当はJINOが,カシオペア時代の櫻井哲夫の大ファンだった,という噂を櫻井哲夫が聞いていたから!)。
そんなカシオペアつながりの,一度限りのスペシャル・セッションが「TETSUJINO」の結成にまでつながった。ミュージシャンとしうものは,そしてベーシストというものは,一度音を合わせたら相手のことが全て分かるみたい!?
「TETSUJINO」名義の『DOUBLE TROUBLE』(以下『ダブル・トラブル』)を聴いてそう思った。高いレベルでの相性の良さを感じる。低音楽器=ベーシストとしての相性以上に,意外や意外,中高音での相性の良さが詰まっている。
櫻井哲夫と日野“JINO”賢二の“超絶技巧”ベース・デュオが弾きまくりで弾き倒し! 期待通りのベース・バトルゆえ,まずは買って大満足!
でも管理人はそれだけでは満足しない。“あの”櫻井哲夫と“あの”日野“JINO”賢二のデュオなのだから,ベース弾きまくり以外にも仕掛けがあるはず…。
ズバリ『ダブル・トラブル』の仕掛けとは,ベースを主役とするための「中高音の音使い」である。いや〜,これが聴けて大満足。管理人はこんなベース・デュオが聴きたかったのだ。
櫻井哲夫と日野“JINO”賢二のベーシストとしての会話は「低音の密度」に表われている。チョッパーで弾いてもツーフィンガーで弾いても,低い声で「語り合っている」。それも全く違う楽器で会話をしているかのように…。
そう。違う切り口で相手のセンスが入ってくる。ソロの掛け合いで聴かせる豊富なバリエーションは“超絶技巧”ベーシストであればこそ! ベースばかりなのに“しつこくない”。
要は相手の良さを引き出す“裏方稼業”のベーシスト。相手のベースを引き立たせるためなら,自分はギタリスト役でもピアニスト役でも務めてみせる。そんな気概がベースの音域を離れた「中高音の音使い」に表われていると思う。

『ダブル・トラブル』の基本は“重戦車”デニス・チェンバースとの即興メロディアス路線のコンセプトであるが,相当に自由度の高いセッション集であって,高速チョッパー好きには「鳥肌モノ」! ベース・バトルってここまで出来ちゃうんだっ!
01. BROTHA
02. AALIYAH
03. SOME SKUNK FUNK
04. ELEBE-TA-IMU
05. PHANTOM LADY -INTERLUDE-
06. U' R SMILE -INTERLUDE-
07. ETERNAL JOURNEY
08. S.O.S. PLANET EARTH
09. YOU MAKE ME FEEL BRAND NEW
10. FOR THE FOUNDATION
11. I'M OAN
12. DIG ET VOUS? -INTERLUDE-
13. GOODBYE BARON
14. WANNA SEE U
(セブンシーズ/SEVEN SEAS 2008年発売/KICJ 545)
(ライナーノーツ/坂本信)
(ライナーノーツ/坂本信)