
1つ目の涙は「絶賛の涙」である。
渡辺貞夫のアルト・サックスこそが「世界一」である。こんなにも「美しく・優しく・温かい」アルト・サックスは世界中を探し回っても見つからない。
個人的には渡辺貞夫の音楽があれば何があっても生きていける。本気でそう思う。これまでのナベサダのアルバムは全部好きだ。そんな思いを持って聴いた『ナチュラリー』。1曲目の【NATURALLY】を聴いただけで涙が溢れてくる。そしてアルバムを全部聴き終えるまで,ずっと涙が止まらない。
では読者の皆さんに『ナチュラリー』を奨めたいか,と問われればそうでもない。恐らく,他の音楽ファンの涙腺はゆるくならないかもしれないから。
管理人と同じ経験ができる人とは,これまでの人生をずっと渡辺貞夫と共に生きてきた人だけなのだと思う。ずっとナベサダと時を過ごしてきたから,一音聴いただけで感動してしまう。渡辺貞夫の“今”が聴こえてくるからだ…。
まだまだナベサダの体調は良さそうだ。いつもと変わらぬナベサダの音色を確認できて安心する。その上で,今までとは違ったナベサダを打ち出そうとしている姿勢に泣けてくる。
「貞夫さん,マイペースで大丈夫ですから。そんなに飛ばさなくて大丈夫ですから。もう十分に満足していますし,心から感動しています。感謝しています」。
2つ目の涙は「悲しみの涙」である。こちらは実際に涙することはないが“心の涙”ということで…。
渡辺貞夫の老いを初めて,証拠として目のあたりにしてしまった。初めて直視させられてしまった。親の老いた姿を見た時の思い出とと被ることがあって…。
管理人の知る渡辺貞夫とはオリジナル曲の制作にこだわり続ける男である。勿論,カヴァー曲も演奏する。有名スタンダード曲を取り上げ,自分の感じたままに新鮮なアレンジを施す渡辺貞夫も大好きである。
それがどうだろう。『ナチュラリー』の【WATER COLORS】と【SPRING】に驚いた。
何と!【WATER COLORS】は,ほぼ【MY DEAR LIFE】。【SPRING】は,ほぼ【TIMES WE SHARED】。あれ程「オリジナル,オリジナル」と連呼してきた渡辺貞夫もついに…。

『ナチュラリー』には,若い頃のナベサダはいない。でも今のナベサダがいる。老いを自覚し始め「自分の音と懸命に闘っている」ナベサダのアルト・サックスが記録されている。
こんなにも「美しく・優しく・温かい」アルト・サックスは渡辺貞夫の他にはない。渡辺貞夫は命を懸けて,自分の音楽を守っている。自分の音楽を更に発展させようとしてもがいている。
渾身のバラード【SMILE】に,心が震えて止まらない。感動が止まらない。
01. Naturally
02. Junto Com Voce
03. After Years
04. Bem Agora
05. Water Colors
06. Na Lapa
07. Carinhoso
08. Bird's Song
09. Spring
10. Smile
(ビクター/JVC 2015年発売/VICJ-61742)
(ライナーノーツ/斉藤嘉久)
(ライナーノーツ/斉藤嘉久)
コメント一覧 (2)
今回、このブログのコメントを偶然に拝見し、私もnaturallyをはじめて聴いた時に、同じように思った所があると嬉しく思い、コメントを送らせていただきます。
元気にやりますよ!って今の、その時の貞夫さんの自然な朗らかさ、活気をひしひしと感じ嬉しくなりました。いつも心を揺さぶられ、包み込まれ満たされる。
私は曲調には特に思うことはないので、悲しくはなりませんでしたけれど。
40年近く渡辺貞夫さんを聴いてこられたMさんも同じように感じられましたか?
貞夫さんの現在・過去・未来を自然と思い浮かべては感動と郷愁の気持ちが湧き上がってきたアルバムです。
貞夫さんはアメリカへの出発前は大変だったでしょうけど,帰国後は順調に活動してこられたと思います。そこへ来てここまで自分と格闘しておられるとは感服です。
もうピークは過ぎておられますが,あの音が聞けるだけで感動もの。ご本人はまだまだ精進を目指しています。私にとっての貞夫さんは父親や会社の先輩たちと肩を並べる存在なのです。
き、その存在に幸せを感じています。
今回、このブログのコメントを偶然に拝見し、私もnaturallyをはじめて聴いた時に、同じように思った所があると嬉しく思い、コメントを送らせていただきます。
元気にやりますよ!って今の、その時の貞夫さんの自然な朗らかさ、活気をひしひしと感じ嬉しくなりました。いつも心を揺さぶられ、包み込まれ満たされる。
私は曲調には特に思うことはないので、悲しくはなりませんでしたけれど。