
『トリコ・ロール』のタイトルから連想したのが,おフランスの「トリコロール・カラー」(ご丁寧にアルバム・ジャケットがトリコロールしている!)だったのだが,これは渡辺香津美お得意のワルふざけのようで『TRICOROLL』のスペルが違う(おフランスの場合は「TRICOLORE」)。
ズバリ『TRICOROLL』の真意とは「TRIO」+「ROCK’N ROLL」! 『トリコ・ロール』のタイトルに,エレクトリック・ギター・トリオのノリの良さや躍動感が“ミーニング”されている。
個人的に『トリコ・ロール』のハイライトは,ベースのヤネク・グウィズダーラの名演に尽きる。
渡辺香津美のギターはいつも通り。曲ごとにインパクトを与えているのがドラムのオベド・カルヴェールとオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスになるのだが,自然と,知らず知らずのうちにヤネク・グウィズダーラのベース・ラインばかりを追いかけてしまう。
ヤネク・グウィズダーラのプレイ・スタイルが,音色でハッキリした主張するフィンガー・ベースであって,渡辺香津美と共演してきたベーシストでは,ジェフ・バーリンやバーニー・ブルネルとイメージが被るから好みなのだと分析する。それにしてもヤネク・グウィズダーラの「キザミ」が凄い。安定したビートから「怪物」が幾度となく登場している。素晴らしい構成力は「バケモノ」である。
『トリコ・ロール』のもう一つの“目玉”が選曲。『MOBO』収録の再演となる【上海】とYMOのサポートで弾いていた【ライディーン】。
この2曲が大変興味深いのだが『トリコ・ロール』を【上海】と【ライディーン】目当てで聴いているうちに,その【上海】と【ライディーン】に間に挟まれた【メタボリズム】に完全KO。
いつしか管理人の『トリコ・ロール』聴きとは【メタボリズム】を聴く行為を指すようになってしまった。
そうしてヤネク・グウィズダーラにジェフ・バーリンやバーニー・ブルネルを重ねてしまうように【メタボリズム】を聴いていると,ジェフ・バーリンの『THE SPICE OF LIFE 2』(『THE SPICE OF LIFE』の方ではない)とバーニー・ブルネルの『KILOWATT』の2枚が脳裏に浮かんでくる。

出来としては完全に初演に負けている【上海】と【ライディーン】も,これはこれでイケテしまう感覚。
『トリコ・ロール』がジワジワと来る。「TRIO」+「ROCK’N ROLL」の「ROLL」が来ている。
惜しむべきは,渡辺香津美の狙いとしては曲調によって2人のドラマーを使い分けてみたのであろうが,ジワジワと来ている間に,こちらはオベド・カルヴェールではなくてオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスの方が良かった,そしてこっちはオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスではなくてオベド・カルヴェールの方が良かった,との雑念が入ってしまった。
渡辺香津美にとっては「究極の選択」となったのかもしれないが,個人的にはオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスで通しても良かったかも…。
01. SHANG-HAI
02. METABOLISM
03. RYDEEN
04. ALGORITHM
05. SEA DREAM
06. PERFECT WATER
07. THE SIDEWINDER
08. AZIMUTH
09. MOMENT'S NOTICE
(イーストワークス・エンタティンメント/EWE 2011年発売/EWBS 0184)
(☆BLUE−SPEC CD仕様)
(ライナーノーツ/石沢功治)
(☆BLUE−SPEC CD仕様)
(ライナーノーツ/石沢功治)
コメント一覧 (4)
いくら器用と言っても、本職の前では、単に弾けているだけに終わっていると思います。
Logさんの言いたいニュアンス。分かります。私もそう思っているので最近の香津美さんの活動はフォローしておりません。
ギターのテクニックは進歩しているのでしょうけど音楽性は,聴いて興奮するという点で語ればもう10年以上の停滞なのだと感じています。
「KAZUMI BAND」と「MOBO」があれば一生やっていけます。
香津美さんが昔やっていた、「ドガタナワールド」というFM番組では、カズミバンド、MOBO倶楽部のライブが速報的にオンエアされたり、ジャマラディーン・タクマ、井上敬三、近藤等則らとのゲリラ的ライブが楽しかった。
私が思うに香津美さんは、厳格な判断を下すプロデューサーとか、音楽的なビジョンが豊富な共演者でないと、予定調和に留まってしまう所があります。
「MOBO」はコーディネーターの生田朗の仕切りのお陰だし、「Tochika」では、マイク・マイニエリの指導が厳しかったと聞く。
カズミバンドなどは、メンバーがいてこその名バンドですよ。特に清水靖晃がキレ者で、かなり過激なビジョンを持っている人ですね。
「ドガタナワールド」。私も毎週聴いていました。だからLogさんの香津美さんへの物足りない思いが理解できるのです。
「カズミバンドなどは、メンバーがいてこその名バンド」とは凄い言葉です。でもあの時期の香津美さんがいたからこその名バンドだと思いますよ。香津美さんの代わりは他の誰にも務まらなかったと思っています。