
つまり,大坂昌彦こそが超大物「日本一のジャズ・ドラマー」なのである。
大坂昌彦の何がそんなに凄いのか? 管理人なら「音楽的なEM>ドラマーだから」と答えよう。
大坂昌彦の“最高傑作”『WALKIN’ DOWN LEXINGTON』(以下『ウォーキン・ダウン・レキシントン』)は,そんな“音楽的なドラマー”としての資質がよく表現された名盤である。
『ウォーキン・ダウン・レキシントン』の基本は,ドラムの大坂昌彦,ピアノのマルギュー・ミラー,ベースのクリスチャン・マクドナルドとのピアノ・トリオ。
この超豪華ピアノ・トリオを“回している”のが大坂昌彦の変化に富んだドラミングである。
ドラマーのリーダー・アルバムゆえ,どこまでドラムが前面に出るかを考えながらの演奏になるのだろうが,バラエティに富んだ楽曲に合わせてコントロールされた「音楽的」なアクセントが多彩で,どんな曲調でも大坂昌彦のドラムが「音楽のど真ん中」にドンと出る。
それ位,大立ち回りのドラムなのに『ウォーキン・ダウン・レキシントン』の印象とは,大坂昌彦のドラムではなく,大坂昌彦のオリジナル曲の方である。
『ウォーキン・ダウン・レキシントン』にゲスト参加したのは,トランペットとフリューゲルホーンのダスコ・ゴイコビッチ,アルト・サックスのフィル・ウッズ,ソプラノ・サックスとアルト・サックスのマーク・グロス,ボーカルのキム・ナザリアンという,超ビッグなジャズメンたち。
マルギュー・ミラー,クリスチャン・マクドナルドも含めて,ジャズメン足るもの,こんなにも凄腕のメンバーを与えられたら,パーっと打ち上げ花火的な演奏をしたくなるものだろうが大坂昌彦はそうはしない。
『ウォーキン・ダウン・レキシントン』のポリシーというか縛りとは,演奏ではなくメロディー・ファースト。至ってフォーマルでオーソドックスな演奏に徹している。複雑なコードで曲が進むのだが,全編破綻なく自然な流れがカッコよい。ゆえにこの凄腕メンバーが揃ったということなのだろう。
ダスコ・ゴイコビッチとフィル・ウッズを主にボーカル・ナンバーの間奏として贅沢に使う意味も理解できるというものだ。

『ウォーキン・ダウン・レキシントン』の聴き所は,大坂昌彦の確かなドラミングとメロディーメイカーの才!
「日本のキース・ジャレット・トリオ」=「マサちゃんズのドラマー」にして「スイングジャーナル誌読者投票ドラム部門」16年連続第1位!という“音楽的なドラマー”大坂昌彦のマルチな才能と持ち味が遺憾なく記録されたアルバムだと思う。
01. CHATTE TROIS COULEURS
02. WALKIN' DOWN LEXINGTON
03. THE RIVER FLOWS INTO THE NIGHT
04. CLOSE TO YOU
05. AN ENGLISHMAN IN NEW YORK
06. CHICK-A-DEE
07. ONCE UPON A SUMMERTIME
08. L-O-V-E
09. CIRCADIAN RHYTHM
10. UNCHAINED MELODY
(キングレコード/KING RECORD 1998年発売/KICJ-351)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
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