
櫻井哲夫の「ブラジル路線」が気に入った後に,イマイチだった『GENTLE HEARTS』のライブ盤を出されても…。しかもフォロー・ツアーとは呼び難い,CD発売4年後にライブ盤を出されても…。
だから『GENTLE HEARTS TOUR 2004』は,櫻井哲夫ファンとしては初めてとなるスルー。購入したのは翌年となった。
購入のきっかけは櫻井哲夫ではなくグレッグ・ハウの『EXTRACTION』。『EXTRACTION』とは,ギターのグレッグ・ハウがドラムにデニス・チェンバース,ベースにヴィクター・ウッテンを迎えて制作されたギター・トリオ。
すなわち『GENTLE HEARTS TOUR 2004』は,ベーシストがヴィクター・ウッテンから櫻井哲夫に交代したグレッグ・ハウのギター・トリオと見立てることもできるわけで(実際にグレッグ・ハウの【EXTRACTION】も演奏されているし)『GENTLE HEARTS TOUR 2004』1枚で,櫻井哲夫のベース・トリオとグレッグ・ハウのギター・トリオの2枚分を楽しめる!
聴く前は駄盤と思っていた『GENTLE HEARTS TOUR 2004』が素晴らしい。怒涛のテクニカル・パンク・ハードロック・フュージョンの名盤である。
事実『GENTLE HEARTS TOUR 2004』を聴いた後“本家”『GENTLE HEARTS』を何度,引っ張り出して聴き直したことだろう。
それまではイマイチだった【SAMURAI FAITH】【BRAIN STORM】【GENTLE HEARTS】【THE INVISIBLE WAY】【WONDERLAND IN THE SKY】が名曲に聴こえる。← 眠りから覚めた今は名うてのセッション・ナンバーだと思っています。
『GENTLE HEARTS TOUR 2004』の主役は『GENTLE HEARTS』でも主役を張ったグレッグ・ハウのギターである。
早弾きのテクニックはアラン・ホールズワースばりだし,スレーズがアウトする感じはジョン・スコフィールドばり。メタル系なのに明確にジャズ・ギターを意識している。
『GENTLE HEARTS』セッションのために櫻井哲夫本人が熱望したギタリストだけのことはあると思う。
グレッグ・ハウの脇を固める櫻井哲夫のチョッパー・ベースがメロディアスに歌う。6弦ベースの高音弦でのパンチングは“ベース・ギター”と呼ばれるにふさわしい。ベースでもありギターでもある。
デニス・チェンバースの暴走するドラミングは『GENTLE HEARTS』にはなかったライブならではのグルーヴ。
グレッグ・ハウにジョン・スコフィールドが乗り移った瞬間,デニス・チェンバースの中の“野獣”が顔を出している。

グレッグ・ハウのギター・ソロは,手癖が多くて?アドリブが少なめな分,小野塚晃のキーボード・ソロがテンションアップのボタンを押している。流石は“超絶技巧集団”DIMENSION〜。
『GENTLE HEARTS TOUR 2004』のハイライトは【PAVANE POUR UNE INFANTE DEFUNTE】と【GENTLE HEARTS】のバラード2曲。
小野塚晃のバッキングが“歌もの”櫻井哲夫の奥深い演奏に色彩を添えている。
小野塚晃が仕掛けで加わった『GENTLE HEARTS TOUR 2004』は『GENTLE HEARTS』とは別物なのである。
01. SAMURAI FAITH
02. THE INVISIBLE WAY
03. PAVANE POUR UNE INFANTE DEFUNTE
04. PUNK JAZZ
05. EXTRACTION
06. GENTLE HEARTS
07. BRAIN STORM
08. WONDERLAND IN THE SKY
(ビクター/JVC 2005年発売/VICJ-61265)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)
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