
『TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS』が,真に総決算的なライブ盤であったから,今回の「デビュー30周年記念」盤も,直近の10周年を総括する内容かと思いきや『マイ・ディア・ミュージックライフ』はそうではない。
そう。10周年とか20周年とか30周年ではなく,実際にはデビュー以前の10年間をも加えた「THE櫻井哲夫」の40周年を総括してみせている。
“超絶”チョッパー・ベースものもあれば“歌もの”もあるし,カシオペアとジャコ・パストリアスのカヴァーもある。“超絶”チョッパー・ベースのド真ん中であり,J−フュージョンのど真ん中!
櫻井哲夫の『ミュージックライフ』は真に「やりたい放題」。櫻井哲夫はこうでなくっちゃ!
櫻井哲夫がソロとなって一番変化したことは,自分の好きな共演者の特徴を“聴かせる”ことで,自分自身の音楽を“聴かせる”ことであろう。要は共演者を「取り込んでしまう」ベーシストへと成長したのだ。
『マイ・ディア・ミュージックライフ』でも,サックスの本田雅人と勝田一樹,キーボードのボブ・ジェームスと小野塚晃,ギターの野呂一生と菰口雄矢と岡崎倫典,ドラムの則竹裕之とジーン・ジャクソン,パーカッションのカルロス菅野の個性的な音を櫻井哲夫の体内へと「取り込んで」いる。
例えば“目玉”である【DOMINO LINE】のハイライトは“ドミノ倒し”の新アレンジが最高でして,櫻井哲夫のベース・ソロを確保しつつも,雰囲気としては青木智仁と組んでいた当時の初期DIMENSIONによる【DOMINO LINE】へと見事に仕上がっている。櫻井哲夫がバックを見事に廻しながらの余裕ある“超絶”にウォー!
櫻井哲夫のアイドルであるジャコ・パストリアスの【TEEN TOWN】と【KURU】であるが,聴いた感じのファースト・インプレッションはマーカス・ミラーによるジャコ・パストリアスのカヴァーに似ていると思った。
つまり変に櫻井哲夫色に塗り変えるのではなく,ジャコ・パストリアスがやろうとしたことを理解した上でのカヴァーを目指している。ジャコ・パストリアスのGROOVEを完コピしている。素晴らしい。
そ〜して迎える【リンゴ追分】での6弦チョッパーによるファンク・ベースの大嵐! 岡崎倫典のギターが「津軽三味線」のようにかき鳴らされる前面でのファンク・ベースがとんでもなくはまっていて超カッコイイ! 美空ひばりがベースでジャズを熱唱するとこうなるのだろう。“歌もの”の櫻井哲夫が最高に素晴らしい。

『マイ・ディア・ミュージックライフ』から聴こえてくるのは「少年時代」に愛してやまなかった櫻井哲夫の『ミュージックライフ』。
世界最高峰のベース・テクニックを持ち,総合音楽家として出来上がった櫻井哲夫が奏でるベース・サウンドは,櫻井哲夫の「少年時代」に“頭の中で鳴っていた音楽”の具現化なのだと思う。
桜ちゃん,おめでとうございます!
01. REGENERATE
02. TEEN TOWN
03. BRIGHT MOMENTS
04. MELODIA
05. I WISH U FUNK
06. DOMINO LINE
07. MIRAGE
08. RINGO OIWAKE
09. KURU
10. AFTER THE LIFE HAS GONE
(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2009年発売/KICJ-566)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)
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