
『ヴァイタル・ワールド』で,これまで“紳士”を貫いていた櫻井哲夫が野生の本能を解放し“猛獣使い”へと変身した。『ヴァイタル・ワールド』のサバイバル・チックなジャケット写真そのまんまのテクニカルでハードで「楽器弾きまくり」のセッション大会。
全曲,櫻井哲夫が作曲した“モチーフ”をデニス・チェンバースがドラムで,グレッグ・ハウがギターで,縦横無尽の発想で色付けしていく。
櫻井哲夫+デニス・チェンバース+グレッグ・ハウ組も,スタジオ盤の『ジェントル・ハーツ』とライブ盤の『GENTLE HEARTS TOUR 2004』で長いセッションを重ねた賜物であろう。『ヴァイタル・ワールド』では過去2作では感じなかった,奥深い音楽表現が鑑みれる域にまで到達している。これは凄いアルバムである。
櫻井哲夫のベースが抜群であって,明確なベース・ラインで“野獣のドラム”をコントロールしてみせる。爆裂なのである。
『ジェントル・ハーツ』『GENTLE HEARTS TOUR 2004』では,グレッグ・ハウに主役を譲っていた櫻井哲夫が,グレッグ・ハウを押しのけてメロディーラインを演奏している。
こんな櫻井哲夫に,デニス・チェンバースとグレッグ・ハウが本気を出さないはずがない! 速度計のMAXを振り切れている! 超高速なのに安定する,何てないベース・ラインに,櫻井哲夫の本物が鳴っている!
最高にキレイ目で洗練された「制御された」ベース・ラインなのに「制御不能な」演奏エネルギーで満ちている。自分の中のボルテージを上げている。
そう。櫻井哲夫がベースに,デニス・チェンバースがドラムに,グレッグ・ハウがギターに“思いの丈”をぶつけている!

そう。『ヴァイタル・ワールド』における櫻井哲夫のテーマは「完全燃焼」。自らの体内にたまっている爆発寸前のマグマを,ジミ・ヘンドリックスのように一気呵成に放出している。
櫻井哲夫のパワーと感受性の強さを体感するなら『ヴァイタル・ワールド』が一番である。とにかく凄い演奏力である。
01. Critical Planet
02. Alien's Feast
03. A Tear Of The Clown
04. Are You Ready
05. Another Kingdom
06. Triangle Square
07. Monster Parade
08. Father
(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2010年発売/KICJ-598)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)
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