
管理人は『ワフー』を聴く度に,自分がなぜにそこまでデューク・ピアソンが大好きなのか,その理由を再確認させられてしまう。
ズバリ,タイトル・トラック【WAHOO】はデューク・ピアソン版の【リンゴ追分】だと言い切ってしまおう。
デューク・ピアソンを語る際,デューク・ピアソンが持つ「異国情緒」は外せないのだが,特にデューク・ピアソンは他の外国人ジャズメン以上に日本人的である。
デューク・ピアソンの楽曲に,雅楽とか三味線が登場してもおかしくない。あるいは演歌が登場してもおかしくない。そんな日本人的なメロディー・ラインに惚れてしまうのだと自己分析している。
後の「デューク・ピアソン・ビッグ・バンド」の出発点となる『ワフー』が織りなす3管ハード・バップが,日本の歌番組で歌謡曲を演奏するビッグ・バンド『和風』に聴こえてしまう。
この意見に同意する人は少ないのかもしれないが,偶然,この『ワフー』批評を目にした方は,そんな視点で聴いてみてほしい。一度そう思ってしまうとそのように聴こえると思うから…。その方が後々幸福だと思うから…。
( 個人的には「デューク・ピアソン・ビッグ・バンド」を「NEW HERD」だと思いたい! ただし,デューク・ピアソンは,こればかりではなく正統派のジャズも生涯続けた「二刀流」「三刀流」のハイセンス・マルチ・ミュージシャンの筆頭格。聴けば聴くほど素晴らしい才能にメロメロきます )
まっ,そういうことで『PROFILE』『TENDER FEELIN’S』と“ジャズ・ピアニスト”としてブルーノートで活動してきたデューク・ピアソンだったが『ワフー』以降は“プレイング・マネージャー”として,アレンジャーやプロデューサーの視点で,非アメリカ的なブルーノートのジャズを創造していくことになる。
興味深いのは,デューク・ピアソンと同時期のブルーノートというレコード会社は,ハービー・ハンコックやウェイン・ショーターに代表される「新主流派」のリリース・ラッシュ。
それなのに,デューク・ピアソンの思うがままに『和風』3管ハード・バップを作らせたアルフレッド・ライオンのデューク・ピアソンに対する信頼とは如何許りであろうか?

『ワフー』で,グッと来るのは【FAREWELL MACHELLE】【WAHOO】の2トラックのみ。
これは『ワフー』の制作を許したブルーノートとアルフレッド・ライオンにとっての悲しいお知らせであるが『ワフー』でデューク・ピアソンが取り組んだ“管を鳴らす”アイディアが音楽として完成したのは,後の『INTRODUCING DUKE PEASON’S BIG BAND』ではなく,アトランティック・ジャズからリリースされた『HONEYBUNS』と『PRAIRIE DOG』の方である。
しかし,そうではあってもデューク・ピアソン・フリークにとって『ワフー』の重要性はやっぱり外せない。
ドナルド・バードのトランペット,ジェームス・スポールディングのアルト・サックス,ジョー・ヘンダーソンのテナー・サックスを3管アンサンブルとしてではなく,美空ひばりばりのソウルフルなソロイストとしても起用したデューク・ピアソンのハイセンスな音楽眼は聴き逃せない。
01. AMANDA
02. BEDOUIN
03. FAREWELL MACHELLE
04. WAHOO
05. ESP(EXTRASENSORY PERCEPTION)
06. FLY LITTLE BIRD FLY
(ブルーノート/BLUE NOTE 1965年発売/TOCJ-4191)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,上条直之,福山誠)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,上条直之,福山誠)