
これだけのツワモノが揃った5管編成の『ザ・ライト・タッチ』がシンプルに響く。『ザ・ライト・タッチ』の主役はデューク・ピアソンのピアノである。
それというのも『ザ・ライト・タッチ』で腕を振るったデューク・ピアソンの絶品アレンジは,いつものアンサンブルではなくソロイストのピックアップにある。
5管フロントがユニゾンするのではなく,5人中1人だけがメロディーを吹き,デューク・ピアソンのピアノとデュエットしている瞬間がある。
そう。『ザ・ライト・タッチ』で『プロフィール』と『テンダー・フィーリンズ』で鳴らしたのピアノ・トリオのデューク・ピアソンが帰ってきている。かつてなくデューク・ピアソンのピアノが前に出ている。
ズバリ『ザ・ライト・タッチ』でデューク・ピアソンが追求したのは,アンサンブルとソロの対比の中で響くジャズ・ピアノであろう。
ピアノを効果的に響かせるための,サビでの分厚い5管フロントであり,ピックアップされた5人のソロイストとのハーモニーである。“豪華なのに静かに動く”超個性派5管フロントの「あっさり・タッチ」。
これぞ『THE LIGHT TOUCH』→『THE RIGHT TOUCH』の真骨頂なのであろう。
久しぶりに前に出ることにしたデューク・ピアソンのピアノが実にスムーズに動く。
コードはファンキーだがサバサバした運指に聴こえる。部分部分ではリズミックに感じるのだが知的で軽やかにまとめ上げる。出来上がりが上品である。キレイなジャズ・ピアノなのである。
大編成の中で弾くピアニストは難しい役回りだと思う。肝心要のピアニストが乱れるとセッションっぽく聴こえてしまうし,カチッと譜面通りに弾くわけにもいかない。
重くもならず軽くもならない。黒いのだが黒すぎない。そんな“ジャズ・ピアニスト”デューク・ピアソンのハイセンスが実に素晴らしい。

惜しむべきは【SCRAP IRON】での落とし方である。それまで『THE RIGHT TOUCH』で推してきた流れが【SCRAP IRON】1曲でアルバム全体が見事に不安定化して聴こえてしまう。
でも【SCRAP IRON】のハズシを含めての『THE LIGHT TOUCH』→『THE RIGHT TOUCH』。
この不思議な魅力が耳から離れない愛聴盤なのです。
01. CHILI PEPPERS
02. MAKE IT GOOD
03. MY LOVE WAITS (O MEU AMOR ESPERA)
04. LOS MALOS HOMBRES
05. SCRAP IRON
06. ROTARY
(ブルーノート/BLUE NOTE 1967年発売/TOCJ-9251)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/岡崎正通)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/岡崎正通)