INTRODUCING DUKE PEARSON'S BIG BAND-1 トリオクインテットセクステットオクテットノネットまでやったデューク・ピアソンの“大編成志向”はまだまだ終わらない。
 ついにデューク・ピアソン念願の&デューク・ピアソン待望の「デューク・ピアソンビッグ・バンド」の誕生である。

 タイトルが良い。『INTRODUCING DUKE PEARSON’S BIG BAND』(以下『イントロデューシング・デューク・ピアソン・BIG BAND』)。
 そう。デューク・ピアソンによる「ビッグ・バンドの紹介」なのである。
 こんな音楽は如何ですか? こんなジャズはどうですか? こんなビッグ・バンドもあるんですよ?

 「デューク・ピアソンビッグ・バンド」の結成はデューク・ピアソン長年の夢であり野望であったことだろう。
 そんな夢であり野望の実現は,ブルーノートの“天才”プロデューサーとして活躍し始めたデューク・ピアソンの頑張りが認められたこともあるだろうが,それ以上に「サド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ」から“火が付いた”ビッグ・バンド再評価の流れと無関係ではないと思う。

 とは言え「デューク・ピアソンビッグ・バンド」は「サド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ」の音とは趣向が違う。
 最大の理由は「サド=メル」がジャズ・ロック的なバンド・サウンドを特徴としているのに対し「デューク・ピアソンビッグ・バンド」は,ほぼデューク・ピアソンの個性そのまんまのサウンドである。

 デューク・ピアソンの頭の中を具現化してくれるビッグ・バンド・サウンドを手に入れて,デューク・ピアソンの“天才”が爆発している。
 自由気ままなリハーサル・オーケストラにして,デューク・ピアソンの特徴であるスマートな音階がバッチリ出ている。デューク・ピアソンのもとに定期的に集まる仲間たちがイメージする,これぞ「真のデューク・ピアソン・ミュージック」なのだと思う。

INTRODUCING DUKE PEARSON'S BIG BAND-2 一方のデューク・ピアソンにしても,様々なタイプの楽曲を準備し,自分のもとに集まったジャズメンたちの特徴を引き出すべくアレンジの才を大いに発揮している。

 『WAHOO』〜『HONEYBUNS』〜『SWEET HONEY BEE』で1度は完結した「デューク・ピアソン・ミュージック」であったが,ダイナミックに“管が鳴り響く”『イントロデューシング・デューク・ピアソン・BIG BAND』こそが「真のデューク・ピアソン・ミュージック」であり,大編成を得意とする類稀なる才能に“聴き耳を立てるべき”ビッグ・バンドの登場である。

 ただし,勢いとまとまりで「サド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ」には追いつけていない。比較すべきでないことは心得ているのだけれど…。

  01. GROUND HOG
  02. NEW GIRL
  03. BEDOUIN
  04. STRAIGHT UP AND DOWN
  05. READY WHEN YOU ARE C.B.
  06. NEW TIME SHUFFLE
  07. MISSISSIPPI DIP
  08. A TASTE OF HONEY
  09. TIME AFTER TIME

(ブルーノート/BLUE NOTE 1968年発売/TOCJ-4276)
(ライナーノーツ/アラン・グラント,上条直之,瀬川昌久)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)