
前作『INTRODUCING DUKE PEARSON’S BIG BAND』からは「あれもこれもという印象」を受けたが『ナウ・ヒア・ジス』のトータル・サウンドはまとまっている。
抜きん出た奇抜さなどは感じないが,いわゆる伝統的なビッグ・バンドとは一味違うモーダルな仕上りである。維持費のかかるビッグ・バンドをここまでチューンアップしてくるとは,デューク・ピアソンの本気度を感じないわけにはいかない。
真にデューク・ピアソンが「本当にやりたいことをやりきったフォーマット」とは「デューク・ピアソン・ビッグ・バンド」ではなかろうか?
作曲もそうなのだが,特に編曲の魅力に“憑りつかれた”デューク・ピアソンが“自腹を切ってまで”大盤振る舞いした『ナウ・ヒア・ジス』の“鳴りっぷり”が最高に素晴らしい。
『ナウ・ヒア・ジス』のメンバーは,トランペットのジム・ボッシー,ランディ・ブレッカー,バート・コリンズ,ジョー・シェプリー,マービン・スタム,トロンボーンのガーネット・ブラウン,ジミー・クリーブランド,ベニー・パウエル,ケニー・ラップ,サックスのジェリー・ドジオン,アル・ギボンズ,フランク・フォスター,ルー・タバキン,ペッパー・アダムスに,ピアノのデューク・ピアソン,ベースのボブ・クランショー,ドラムのミッキー・ローカーの17名編成。
こんな凄腕ジャズメンばかりを起用するとは「デューク・ピアソン・ビッグ・バンド」は,ブルーノートのプロデューサーとしての立場を私的に利用した,デューク・ピアソンの「職権濫用」の結晶であろう。
こんなにも重量級の面々なのに軽やかなサウンドが“飛び出してくる”秘訣こそが,ブルーノートのプロデューサーとして数多くのレコーディングに立ち会いながら「こうでもない。ああでもない」と常に自らのビッグ・バンドの構想を練っていたデューク・ピアソンの“粘り勝ち”にあると思う。

管理人の結論。『ナウ・ヒア・ジス』批評。
デューク・ピアソンが,メンバーを吟味し,アレンジを吟味し,自らの夢を追い続けた「デューク・ピアソン・ビッグ・バンド」とは「デューク・ピアソンの,デューク・ピアソンによる,デューク・ピアソンのためのビッグ・バンド」。
『ナウ・ヒア・ジス』は相当いいですよっ!
01. DISAPPROACHMENT
02. I'M TIRED CRYIN' OVER YOU
03. TONES FOR JOAN'S BONES
04. AMANDA
05. DAD DIGS MOM (AND MOM DIGS DAD)
06. MINOR LEAGUE
07. HERE'S THAT RAINY DAY
08. MAKE IT GOOD
09. THE DAYS OF WINE AND ROSES
(ブルーノート/BLUE NOTE 1969年発売/TYCJ-81064)
(ライナーノーツ/マイケル・カスクーナ,岡崎正通)
(ライナーノーツ/マイケル・カスクーナ,岡崎正通)