
そんな国府弘子の多面性の中心である“ジャズ・ピアニスト”と言う柱を理解するのに『NEW YORK UNCOVERED』(以下『ニューヨーク・アンカヴァード』)を指針として,他のアルバムに接する時,唯一無二の“国府ワールド”を心の底から楽しめるように思う。
『ニューヨーク・アンカヴァード』は,それだけコアな部分の国府弘子の音楽性が聴けると思う。
ジャズ・スタンダードを中心としたオーソドックスなピアノ・トリオの「王道」である。派手さや色味の少ないアプローチである。
国府弘子がピアノ・トリオとジャズ・スタンダードというテーマに「じっくりと正面から向き合っている」。
共演したのは“百戦錬磨な”リズム隊,ベースのクリスチャン・マクブライドとドラム&パーカッションのミノ・シネルである。
世界最高峰のリズム隊を得て,これまでの国府弘子だったら我武者羅に“ガッついた”のであろうが“世界の国府”は“ガッつかない”。
『ニューヨーク・アンカヴァード』は,基本的に抑え目のジャズ・ピアノであって,敢えて余韻を残すようなジャズ・ピアノを弾いている。
ただし『ニューヨーク・アンカヴァード』の演奏レベルは高いが内容は面白みがなく星4つ。国府弘子“らしくない”真面目で静かな演奏であるが,これって,録音エンジニアとの打ち合わせなのか?
管理人は今回の『ニューヨーク・アンカヴァード』をCD盤ではなくXRCD盤で購入した。理由はスチューダーのテープ・レコーダーを使った「ライヴ・トゥ・2トラック」のアナログ録音という触れ込みに目が留まったからだった。
個人的には(経験がそう多くないので説得力はありませんが)XRCDこそが「世界最高の音源」だと思っている。XRCDにSACDは追いつけていないとまで思っている。
そう。国府弘子が『ニューヨーク・アンカヴァード』で挑戦したのは,ピアノ・トリオとジャズ・スタンダードの2大要素に加え,第3にして“本丸の”超高音質録音への挑戦でもあったのだった。

ヤマハのピアノの広告塔としては,チック・コリア,小曽根真,上原ひろみなどが有名であるが国府弘子の美音も広告塔に割って入るべきであろう。国府弘子はピアニストとして素晴らしいテクニックを有している。
そしてミノ・シネルの“生きている”パーカッションには度肝を抜かれる。XRCD盤『ニューヨーク・アンカヴァード』に,オーディオの楽しさを思い起こしてもらった気がする。
さて,クリスチャン・マクブライドとミノ・シネルとの共演だけでもビビルのに,海外での超高音質録音という「シビレル」環境でのレコーディングだと言うのに,やっぱり国府弘子はエレガントで聴きやすい。これが天性の“弘子節”の真骨頂なのだろう。
『ニューヨーク・アンカヴァード』で,国府弘子は「非主流のジャズ・ピアノ」を弾いている。唯一無二の“国府ワールド”とは「非主流のジャズ・ピアノ」のことなのである。
01. BESAME MUCHO
02. STELLA BY STARLIGHT
03. KEY LARGO
04. TICO TICO
05. MALAIKA (P.D.)〜SAFARI
06. ANTONIO'S SONG
07. JU-GE-MU
08. THREE VIEWS OF A SECRET
09. MIAGETE GORAN YORU NO HOSHI WO
10. ONLY TRUST YOUR HEART
(ビクター/JVC 2004年発売/VICJ-61241)
(☆XRCD仕様)
(ライナーノーツ/児山紀芳,山下洋輔)
(☆XRCD仕様)
(ライナーノーツ/児山紀芳,山下洋輔)