HOW INSENSITIVE-1 デューク・ピアソン自身が参加し,作り上げたドナルド・バードの超名盤ア・ニュー・パースペクティヴ』から5年。
 『HOW INSENSITIVE』(以下『ハウ・インセンシティヴ』)はデューク・ピアソンが考える『ア・ニュー・パースペクティヴ』のUPDATE作である。

 「VOICES & JAZZ」で“ゴスペルを聴かせるためのエッセンス”としてのジャズが『ア・ニュー・パースペクティヴ』ならば「VOICES & JAZZ」で“ブラジルを聴かせるためのエッセンス”としてのジャズが『ハウ・インセンシティヴ』なのである。

 ブルーノートの看板を背負い,もはや押しも押されぬ大物となったデューク・ピアソンの視線は,この時期,ジャズの枠を広げることに向けられていた。
 そうして見つけた(魅せられた)ブラジリアン・フレイバーで『ア・ニュー・パースペクティヴ』をUPDATEしてみせた。

 ズバリ『ハウ・インセンシティヴ』を聴いて感じるのが,デューク・ピアソンの,そしてジャズという音楽の“奥深さ”である。
 『ア・ニュー・パースペクティヴ』の「完全盤」となる『ハウ・インセンシティヴ』での試みは,楽器でコーラスする,そして楽器でエスコートするというものである。

 『ハウ・インセンシティヴ』の肝はジャズスタンダードの【STELLA BY STARLIGHT】である。
 この超スタンダードデューク・ピアソンは『ア・ニュー・パースペクティヴ』の“売り”であった「ゴスペル・コーラス」で“スピリチュアル”してみせる。優雅さと軽やかさを感じる洒落た「17名のコーラスの波」が絶妙である。

 そう。『ハウ・インセンシティヴ』の聴き所は,デューク・ピアソンの「静物画」である。ほんのりと温かい「静物画」である。【STELLA BY STARLIGHT】がジャズ史上最高に涼しい。清々しい。

HOW INSENSITIVE-2 ただし,世評では『ハウ・インセンシティヴ』と来れば「クラブ・ジャズ」であって【STELLA BY STARLIGHT】以上に【SANDALIA DELA】【LAMENT】の人気が高い。
 特に島田奈央子さんに代表される【SANDALIA DELA】の「女子受け」は抜群のように思う。

 そう。『ハウ・インセンシティヴ』こそが,ジャズの将来を見据えたデューク・ピアソンの「先見の明」。
 デューク・ピアソン自身もアコースティックピアノに加えエレクトリックピアノフリューゲルホーンまでプレイしてみせている。

 ジャズを根っ子に持ちつつ,ジャズに固執せず,新しい音楽やリズムを取り入れ,ジャズに新たな息吹を吹き込み続けたのがデューク・ピアソン“その人”である。
 感度の高いDJたちに最高評価されたジャズメンはデューク・ピアソン以外に存在しない!

  01. STELLA BY STARLIGHT
  02. CLARA
  03. GIVE ME YOUR LOVE
  04. CRISTO REDENTOR
  05. LITTLE SONG
  06. HOW INSENSITIVE
  07. SANDALIA DELA
  08. MY LOVE WAITS (O MEU AMOR ESPERA)
  09. TEARS (RAZAO DE VIVA)
  10. LAMENTO

(ブルーノート/BLUE NOTE 1969年発売/UCCQ-9135)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,佐藤英輔)

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