CHANGES ONE-1 チャールス・ミンガスが「『CHANGES ONE』(以下『チェンジズ・ワン』)と『CHANGES TWO』(以下『チェンジズ・トゥー』は,僕がこれまでに作ったベスト・アルバムだ」と語ったと聞いたら,にわかミンガス・ファンだとしても,これは聴くしかないでしょう。

 『チェンジズ・ワン』と『チェンジズ・トゥー』におけるミンガス・ミュージックが最高にロマンティックしている。
 強面のチャールス・ミンガスであるが,中身=チャールス・ミンガスの音楽家魂が「恋愛小説の乙女」している。甘美なメロディーなのに全くエロさがない。綿密で洗練されたドラマティックなラブ・ソングの大名盤の誕生である。

 そう。『チェンジズ・ワン』と『チェンジズ・トゥー』には,チャールス・ミンガスの理想が素直に音楽で記録されている。ケダモノのようなチャールス・ミンガスが本当に強力で,かつ優雅で美しいと思う。
 真に音楽を聴いて感動する。そんな経験が普段音楽に接することのない人でも経験できる大名盤に違いないのだ。

 『チェンジズ・ワン』と『チェンジズ・トゥー』の基本はハード・バップである。ただし,単なるハード・バップへの回帰作ではない。チャールス・ミンガスが真正面からジャズを捉えている。これこそがチャールス・ミンガス一流の「CHANGE」!

 『チェンジズ・ワン』と『チェンジズ・トゥー』でのチャールス・ミンガスの「CHANGE」は2つ。
 1つ目の「CHANGE」はミンガス・コンボの再編である。女房役のドラマーダニー・リッチモンドだけを残留させて,新メンバーとして,トランペットジャック・ウォルカステナーサックスジョージ・アダムスピアノドン・ピューレンという若き名手たちを起用している。「ミンガス・スクール」の発掘力は真に凄い。

 2つ目の「CHANGE」はミンガスの作編曲に表われた作風の変化である。敬愛するデューク・エリントンの死,そのデューク・エリントンオーケストラの重鎮だったハリー・カーネイの死を受けて,チャールス・ミンガスの創造性が再び爆発している。
 自分の思いの丈,そして新メンバーの煌めく個性に接して,チャールス・ミンガスの特長である雄大なスケール感が更に増している。
 そして表面に現れるチャールス・ミンガスの1番の変化が「怒りの感情の消失」である。

 例えば『チェンジズ・ワン』収録の【アッテカ刑務所事件のロックフェラーを忘れるな】とは,黒人差別に抗議する反白人のメッセージ・ソングであるが,そんな背景など知らずにメロディーだけを聴いていると,実に軽やかで優しい音楽である。厳しさの裏に愛情を感じる音楽である。チャールス・ミンガスの“懐の深さ”を感じずにはいられない。

CHANGES ONE-2 なぜチャールス・ミンガスは「チェンジ」を宣言したのだろう? 
 それこそが,永遠の師匠=デューク・エリントンの「遺志を継ぐ」「位牌を継ぐ」ことにあると思う。怒りの感情を捨て【敬愛する・エリントン・サウンド】を継続・発展させることに残りの人生を費やす腹づもりだったと思う。
 つまりチャールス・ミンガスは自分の我を捨て去った。これこそが最大の「チェンジ」である。

 バラク・オバマさん。世界平和を作り出すには怒りではなく愛や自己犠牲の精神が必要なのです。そのことをチャールス・ミンガス一流の「CHANGE」から学んでほしかった。
 管理人にとって「CHANGE」と来れば,オバマ元大統領ではなくチャールス・ミンガスのことなのである。ちゃんちゃん。

  01. REMEMBER ROCKEFELLER AT ATTICA
  02. SUE'S CHANGES
  03. DEVIL BLUES
  04. DUKE ELLINGTON'S SOUND OF LOVE

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1975年発売/WPCR-27143)
(ライナーノーツ/後藤誠)

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