
その結果,今では原曲以上に有名なジャズ・スタンダードとして演奏され続ける名曲が多数存在する。それも当然!
ジャズの魅力はアドリブにある。手癖のつきまくった美メロを,如何に自分流に料理するか? どこまで崩せるか?に命を燃やすのだから…。
さて,西山瞳が主宰する「NHORHM(NEW HERITAGE OF REAL HEAVY METAL)」のモチーフはヘヴィ・メタルである。
ヘヴィ・メタルの名曲を「ジャズ化」した企画は斬新ではあるが,上記に記した通り,原曲がヘヴィ・メタルかどうかはほとんど関係ない。
『NEW HERITAGE OF REAL HEAVY METAL』を語る上で重要なのは(ヘヴィ・メタルに限らず)西山瞳自身がカヴァーしたいと熱望する曲をカヴァーしたという事実。この1点に尽きる。
極論を語れば,仮にカヴァー曲の題材がクラシック集であったとしても,西山瞳のテンションは『NEW HERITAGE OF REAL HEAVY METAL』の雰囲気とそう変わらないのでは?
それくらいに完璧に「ジャズ化」が完了していると思う。「これぞ,西山瞳の世界」というレベルにまで落とし込まれている。
管理人の結論。『NEW HERITAGE OF REAL HEAVY METAL』批評。
西山瞳と来れば「北欧ジャズ」とか「ヨーロピアン・ジャズ」のイメージが強いが『NEW HERITAGE OF REAL HEAVY METAL』もどことなく“ヨーロピアンの香り”漂う,完全なるコンテンポラリー・ジャズ・アルバムである。
その意味で,元ネタなどは関係なしに,いつも通りの西山瞳のアルバムとして受け止めることができる。ゆえに西山瞳の大暴れを期待するファン,あるいはヘヴィ・メタル好きがジャズ方面への第一歩として聴くアルバムとしては不向きだと思う。
( ヘヴィ・メタル好きの皆さんは西山瞳ではなくて上原ひろみを聴いてください! )
『NEW HERITAGE OF REAL HEAVY METAL』を「ヘヴィ・メタルの「ジャズ化」アルバムとして売り出すのは無理がある。
緻密でスリリングな展開は原曲の魅力なのでしょう。演奏自体は巷のピアノ・トリオと比較しても激しい部類には入らない「陰影系」だと思うのですが…。

だから管理人にとっては全曲が新曲。新曲を西山瞳が妙に気合いを入れて演奏している。『NEW HERITAGE OF REAL HEAVY METAL』の聴き所はそこにある。それだけで十分楽しめる。
ジャズ・スタンダードをピアノで弾いても,ヘヴィ・メタルをピアノで弾いても,西山瞳は西山瞳。
西山瞳さん,今も昔も心の中はロックン・ロールしてたのですねっ。
01. In the Dead of Night
02. Walk
03. Man on the Silver Mountain
04. Skin O' My Teeth
05. Fear of the Dark
06. Upper Levels
07. 悪夢の輪舞曲
08. Demon's Eye
09. The Halfway to Babylon
10. Green-Tinted Sixties Mind
(アポロサウンズ/APOLLO SOUNDS 2015年発売/APLS1510)
(ライナーノーツ/西山瞳,KIKO LOUREIRO,マーティ・フリードマン,大村孝佳,鈴木ヤスナリオ)
(ライナーノーツ/西山瞳,KIKO LOUREIRO,マーティ・フリードマン,大村孝佳,鈴木ヤスナリオ)
コメント